相続・贈与マガジン2017年10月号

贈与? 遺贈?
孫へ財産を残すのにはどうすればいい?

通常、孫は法定相続人ではないので、財産を残すには贈与や遺贈などを検討する必要があります。今回は、孫へ財産を残すための方法をご紹介します。

関係者の状況によって効果的な贈与方法は変わる

贈与や遺贈には、相続税の節税効果があります。「親→子→孫」だと相続税課税を2回受けなければいけませんが、「親→孫」だと一世代飛ばせるからです。また、孫は相続財産を取得しないことから、相続が始まる3年前までに移した資産は相続税が加算されません。では、贈与から紹介していきます。

教育資金贈与(最大額1,500万円)や住宅取得資金(年内だと最大1,500万円)、結婚・出産・育児資金(最大1,000万円)だと、多額のお金を一括で移せます。一方、年間110万円の基礎控除を受けられる暦年贈与は、数年かけて孫に財産を移すことが可能です。(詳細は3ページ)

年齢や時期など、贈与者(財産を与える人)や受贈者(財産をもらう人)の状況によって、効果的な贈与方法は変わります。

養子縁組にすることで基礎控除額を増やせる

遺言で遺贈すると、法定相続人でない孫の相続税は原則2割加算となります。

最近では、孫を養子にする人が増えてきているといいます。養子となった場合、孫は法定相続人として認められます。そうなると、相続税の基礎控除(600万円)を1人分増やせるのです。ただし、養子を法定相続人に加えられる人数には限りがあります。実子がいる場合は1人、いない場合は2人までです。

小規模宅地の特例を活用して不動産を相続すると効果大

不動産の相続を検討している場合は、本誌8月号でもご紹介した「小規模宅地の特例」(8割減特例)の活用を検討してみるのもお勧め
です。土地の評価が最大8割減になります。

8割減特例の対象は以下の通りです。
①配偶者
②同居していた親族
③持ち家のない親族
(親に①②にあたる法定相続人がいない場合に限る)
「小規模宅地の特例」が受けられる事例を紹介します。

配偶者がすでに亡くなっているAさん。1人息子のBさんは結婚しており、自宅を持っています。Bさんはすでに自宅を持っていますの
で、この特例は使えません。しかし、来年大学を卒業して就職する予定の息子Cさん(Aさんの孫)がいればどうでしょう?Cさんが持ち
家を持っていない場合は、孫養子または遺贈で相続させれば③に該当することになり、“8割減特例の対象”となります。

孫への財産付与を検討中の方は、お問い合わせください。

息子1人にすべての自社株を贈与したとき相続でどのような問題が起きる?

Q私は製造業を営んでおり、息子が3人います。素直で真面目な三男を後継者として決め、自社株のすべてを相続時精算課税により生前贈与しました。また「妻には自宅(4,000万円)を残し、子どもは預金(1,000万円)を3等分する」という遺言を作成しようと思っています。この遺言に問題はありませんか?

A質問者が贈与から1年以内に亡くなった場合、自社株の評価額によって遺留分の金額が変わる可能性があります。

民法上では、兄弟姉妹を除く法定相続人に対して最低限の相続分を遺留分として確保するように定めています。また、相続開始前1年以内の贈与財産は、遺留分の基礎財産に含めなければいけません。つまり、質問者が自社株を三男に贈与してから1年以内に亡くなった場合は、自社株の評価額によって遺留分が変化するのです。

相続人が妻と子どもの場合、遺留分は遺産総額の2分の1とされています。仮に今回のケースで自社株の評価額が1,000万円だった場合、遺留分の計算方法は以下の通りです。

6,000万円(遺産総額)×1/2(遺留分)×1/2×1/3(息子の人数)=500万円
息子1人当たりの遺留分は500万円となり、預金で遺留分を補えるので問題はありません。

では、自社株の評価額が2,500万円だった場合はどうでしょうか?
7,500万円(遺産総額)×1/2(遺留分)×1/2×1/3(息子の人数)=625万円
息子1人当たりの遺留分が625万円となり、預金だけでは遺留分を満たせなくなってしまいます。足りない分は自社株によって補わなければいけません。

事業承継における自社株の取り扱いについては民法で特例が設けられており、遺留分算定基礎から除外をしたり、評価額を固定したりすることが認められています。しかし、「遺留分を持っている推定相続人全員の合意」が必要など、手続きが煩雑で利用しづらいのが実情です。

事業承継を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。

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