相続税評価額(そうぞくぜいひょうかがく)とは、亡くなった人が持っていた財産を「相続税の計算上、いくらとみなすか」を決めるための金額のことをいう。
相続税は、実際に売ったときの値段(時価)ではなく、この相続税評価額を基準に計算される。相続税評価額は、財産の種類ごとに決め方が異なる。
- 預貯金は、亡くなった日時点の残高がそのまま評価額になる。
- 上場株式は、相続発生前後の市場価格をもとに計算される。
- 不動産については、実際の売買価格ではなく、国税庁が定めた基準を使う。
- 土地は「路線価」や「倍率方式」、建物は固定資産税評価額をもとに評価される。
このような仕組みがあるのは、不動産の値段が人によって大きく変わりやすく、全国で同じ基準を使わないと不公平が生じるからである。
相続税評価額が分からなければ、
- 相続税がかかるかどうか
- どれくらいの財産を相続したのか
- 兄弟姉妹でどう分けるか
といった判断ができない。
相続税の申告期限は、相続開始から10か月以内と決められているため、早い段階で評価額を把握することが重要になる。
不動産の相続税評価額の例
たとえば、相続した土地の路線価が「1㎡あたり20万円」で、土地の面積が100㎡の場合、
相続税評価額は「20万円 × 100㎡ = 2,000万円」として計算される。
この土地が実際には2,500万円で売れるとしても、相続税の計算では2,000万円の土地として扱われる。
反対に、売却価格が1,500万円しか見込めない土地であっても、評価額が2,000万円なら、相続税は2,000万円を基準に計算される。
このように、相続税評価額は「実際に売れる値段」とは別の、税金計算のための数字である。
不動産売却と相続税評価額
相続税評価額は、相続税の計算に使う数字であり、相続した不動産を売却したときの税金(所得税)の計算では、原則として使われない。
不動産を売却したときの「譲渡所得」は、売却価格 − 取得費 − 譲渡費用で計算される。
ここでいう取得費とは、亡くなった人がその不動産を買ったときの価格である。
相続税評価額が、そのまま取得費になるわけではない。
例外
もし、被相続人がいくらでその不動産を買ったのか分からない場合には、売却価格の5%を「概算取得費」として使うことが認められている。この場合でも、相続税評価額をそのまま差し引く計算にはならない。















