最終更新日:2026年4月13日
収益不動産は「持っているだけ」で相続税が増える?
アパートなどの収益不動産は、老後の収入源としても魅力的で、相続税対策として購入される方も増えています。
しかし実務では、「節税のつもりで始めた不動産が、気づけば相続税を押し上げていた」という相談が後を絶ちません。
なぜそんなことが起きるのでしょうか。そして、どうすれば防げるのでしょうか。
ここでは、皆さんが抱きやすい疑問に答える形で、法人化・民事信託・小規模宅地等の特例という三つの代表的な対策を、誤解しやすいポイントも含めて整理します。
目次
- なぜ収益不動産は相続税を押し上げる?
- 法人化は相続税対策ではなく「所得移転」の仕組み
- 認知症リスクに備えるなら「民事信託」が有効
- 老人ホーム入所中でも「小規模宅地等の特例」は使える?
- まとめ:三つの制度は「役割が違う」からこそ組み合わせが重要
なぜ収益不動産は相続税を押し上げる?
収益不動産は、毎月の家賃収入がそのまま預貯金として積み上がっていきます。
親が高い所得税率で課税されながら資産を増やし続ける構造になり、結果として相続財産が膨らんでしまうのです。
ここで多くの方が抱く疑問が、「では、どうやって増えすぎる資産をコントロールするのか?」という点です。
法人化は相続税対策ではなく「所得移転」の仕組み
まず押さえておきたいのは、法人化は相続税そのものを直接下げる制度ではないということです。目的は、親の所得を抑え、子どもに所得を移すこと にあります。
よくある誤解:管理料を高くすれば節税になる?
「子どもが会社を作り、親の物件を管理して家賃の20%を管理料として受け取れば節税できるのでは?」という相談を受けることがあります。
しかし、一般的な管理料の相場は 5〜10%。20%は明らかに高く、税務調査で否認される可能性が高い設定です。
また、形式だけ整えても意味はありません。
役員となる子どもが実際に管理できる状況かどうか(年齢・健康状態・居住地・管理経験など)も厳しく見られます。
どんな場合に法人化が有効?
法人化が効果を発揮しやすいのは、築年数が古く、借入残高が少ない収益物件 を持っているケースです。
以下を例に挙げるとします。
- 家賃収入:年360万円
- 建築費:3,000万円
- 現在の帳簿価額:1,000万円
この建物を子どもが設立した法人が帳簿価額が時価と乖離していないことを確認した上で買い取れば、親に譲渡益は生じず所得税もかかりません(※登録免許税・不動産取得税は発生します)。
建物を法人に移せば、家賃360万円はすべて法人の収入となり、子どもは役員給与として受け取ることができます。
法人化のメリットと注意点
法人化にはメリットとデメリットがあります。
- メリット
- 親の所得税・相続財産の増加を抑えられる
- 子どもが受け取る給与を将来の相続税納税資金として貯蓄できる
- 家族内で計画的に資産移転できる
- 注意点
- 親に売買代金が入るため、一時的に相続財産が増える可能性がある
- 親の借入が残っている場合は銀行との調整が必要
- 不動産取得税・登録免許税などの初期コストがかかる
「やれば得」ではなく、「条件が整えば有効」という理解が大切です。
認知症リスクに備えるなら「民事信託」が有効
高齢化が進む中、親が認知症になった場合の最大の問題は、不動産の売却・賃貸・修繕などの契約行為ができなくなる ことです。
いわゆる「資産凍結」の状態で、家族であっても勝手に動かすことはできません。ここで注目されているのが 民事信託です。
民事信託とは?
民事信託は、親の財産管理を信頼できる家族に任せる仕組みです。
遺言と違い、親が生きている間から財産管理ができ、相続後の承継先まで契約で決めておけます。
親が元気なうちに信託契約を結んでおけば、判断能力が低下した後も、子どもが財産管理や不動産の運用を継続できます。
成年後見制度との違い
成年後見制度は「財産を守る」ことが中心で、積極的な運用には制限があります。
一方、民事信託は契約に基づいて柔軟に運用でき、不動産の売却や修繕もスムーズです。
制度改正で登記手続きが簡素化
2024年4月より始まった「相続登記の義務化」に伴い、信託終了後の名義変更手続きもより確実に行う必要があります。これに関連し、不動産登記法も改正され、信託が終了した際の手続きにおいて受託者が単独で申請できる範囲が整理されました。これにより、手続きの停滞を防ぎ、よりスムーズな資産承継が可能になっています。
ただし注意点もあります。
国の見解として、民事信託で承継した不動産については、「相続空き家の3,000万円特別控除」が適用できない可能性が高いと整理されています。
将来的に売却による節税を優先したい場合は、信託を利用すべきかどうか、事前に専門家と綿密に設計する必要があります。
老人ホーム入所中でも「小規模宅地等の特例」は使える?
よくある質問
Q:老人ホームで亡くなった父の自宅は、小規模宅地等の特例を受けられますか?
A:一定の条件を満たせば受けられます。
小規模宅地等の特例は、自宅の土地の評価額を最大80%減額できる制度です。
「老人ホームに入っていた=自宅に住んでいない」だけでは、特例が使えなくなるわけではありません。
適用のための主な条件
次の三つがポイントです。
まず、被相続人が要介護認定や要支援認定を受け、特別養護老人ホームや有料老人ホームなど、法律に基づく施設に入所していたことが必要です。
次に、自宅が他人に貸されていたり、事業用に使われていたりしないこと。空き家だからといって第三者に賃貸してしまうと対象外になります。
そして、相続開始時点で「生活の本拠」が自宅にあったとみなせる状況であることが求められます。
「申請中」でも認められるケースがある
要支援・要介護の認定を申請中に亡くなった場合でも、認定が遡って適用されれば特例が認められる可能性があります。
ただし、判断は個別事情によるため、早めの確認が欠かせません。
まとめ:三つの制度は「役割が違う」からこそ組み合わせが重要
ここまで見てきたように、法人化は「所得のコントロール」、民事信託は「資産凍結の防止」、小規模宅地等の特例は「評価額の圧縮」というように、それぞれ役割がまったく異なります。
どれか一つを選べばよいのではなく、家族構成・資産状況・将来の生活設計に応じて組み合わせることが大切 です。
さらに、相続関連の制度は毎年のように改正されます。
数年前の知識のまま判断すると、思わぬ不利益につながることもあります。
「うちの場合はどうなるのか?」
その答えは、個別にしか導けません。相続は時間との勝負になる場面も多いため、気になった段階で専門家に相談しておくことが、結果的に大きな差を生みます。清澤司法書士事務所では初回相談を無料で承っております。「何から聞けばよいかわからない」そんな段階でも、どうぞお気軽にご相談ください。















