相続・贈与マガジン3月号

近年、相続税対策も兼ねて、アパートなどの収益不動産に投資される方が多いと聞きます。しかしながら、収益不動産を親が購入した場合、毎月の家賃収入で所得税率が高くなることで納税が増え、また相続財産がどんどん膨らんでいくことが多々あります。こういった状況を防ぐために、法人化することで子ども世代に所得分散し、子どもはそれを貯金して将来の相続税の納税に備える方法があります。

収益不動産の相続対策は、賃貸物件の法人化を検討しましょう!

“やってはいけない”法人設立の方法

この法人化のポイントは、相続税の対策ではなく、所得の分散移転対策であることです。
よくあるご相談として、子どもの世代が法人を設立し、親所有のアパートの管理受託をし、家賃収入の20%の管理料を受け取る。もしくは本来家賃の80%で借上転貸するというケースがあります。この20%の管理料を子どもの役員給与として支給すれば、子ども世代への所得分散となり、一見所得税の節税ができるように思われます。

しかし、一般的な管理会社に託せば、管理料の世間相場は家賃の5~
10%です。そのため、一般の業者に委託する管理費に比して管理料20%は高く、もし調査があり、適正管理料は管理実態に合わせろと指摘されれば、管理委託で5%、借上転貸なら10%のいわゆる世間相場で課税されることになります。また、法人を設立したとしても役員が管理できるような状態にあるかどうかも重要です。役員の年齢に無理がないか、住所が遠方ではないか、健康状態に問題はないか、管理歴が残っていないかなどと共にしっかりした計画を立てましょう。

より効率的な節税とは?

一方、高賃料立地且つ築年数が古く建築借入残が極めて少ない収益物件を選ぶと、より効率的な節税ができる可能性があります。例えば郊外のアパートで、家賃収入が年360万円で、当初建築費は3,000万円、今の帳簿価額1,000万円とします。

子どもが法人を設立し、親名義の建物部分を1,000万円(帳簿価額)で買い取るとします。帳簿価額売買なら「時価での売買」と証明しやすく、親の譲渡益はゼロで所得税はかかりません(ただし登録免許税・不動産取得税はかかります)。法人が買い取る資金は、銀行借入とします。売買で建物を法人所有に移せば、年360万円の家賃全額は会社のものとなり、法人から子どもが役員給与等を受け取れます。

賃貸収益法人化のメリットと注意点

親が毎年360万円の家賃を受取れば、所得税率も高く相続財産が膨らむだけです。法人化することで親の相続財産が大きくならないようにします。そして、親族に役員給与を支払うことで、子どもはそれを貯金して将来の相続税の納税資金に備えることもできます。

活用の注意点として、親に売買代金1,000万円が入るので、建物の相続税評価次第では一時的に相続税が増加します。建築資金の銀行借入が残っていれば、銀行との交渉も必要となります。

上記注意点も踏まえて、事前のシミュレーションが必要になるため、興味をお持ちいただいた方は当事務所にご相談ください。

65歳以上の高齢者の4人に1人は、認知症及びその予備軍になると言われています。もし自分の親が認知症になった時、遺産分割はどうするのか?一つ間違えば、“争続”の原因にもなりかねません。そこで注目されているのが『民事信託』という制度です。今回はこの制度を紹介します。

財産管理・遺産承継の手法である『民事信託』とは?

民事信託とは?

民事信託とは、簡潔に言うと、家族や親族に親の財産の管理を任せる制度のことです。自筆証書遺言の場合、原則としては親の財産を把握することもできませんし、誰にどのように分配されるのかは親が亡くなった後にしかわかりません。また、遺言によって分割される遺産の運用実態も把握することができません。

しかし、民事信託であれば、親が生存している時から2代、3代、その先まで、設定した信託目的や信託契約内容に基づき、受託者による財産の管理運用ができる、というのが特徴です。

オーダーメイドの民事信託

民事信託は家族構成やその目的によって内容が異なるため、全てオーダーメイドとなります。司法書士や専門家などが民事信託の構成を考え、費用は数十万円から可能です。

民事信託を利用する場合、まず専門家が親の財産について聞き取り調査をします。そこで作成された財産目録をもとに、家族や親族が集まって、財産運用から相続に至るまで、その家族の実情に合わせた信託契約書を作成します。そして、相続人である子どもなどが親の財産を管理することになります。親の介護費用や生活費は子どもたちが管理している信託財産から供出。相続が発生したときは、生前に作成した信託契約書通りに遺産分割が行われるのです。生前に財産の運用から、遺産分割、場合によってはその先の相続まで家族が納得した状態で進められるので、相続がスタートしても争いになりません。

認知症の対策にもなる

例えば、親が認知症になったとします。その場合、成年後見人を立てれば財産の処分は可能ですが、活用はできません。しかし、民事信託を利用して、子どもが親の財産の管理を委託されていれば、信託契約の目的通りに財産運用も可能です。

争いを避けるための民事信託制度。ぜひ、利用してみませんか?詳しくは専門家にお問い合わせください。

老人ホームで亡くなった父の自宅は小規模宅地等の特例を受けられる?

Q先日、老人ホームに入所していた父親が亡くなりました。父は自宅を所有していて、私は相続税を少しでも安く抑えたいと思っています。この場合、小規模宅地等の特例を受けることはできるのでしょうか?

A受けられます。自宅を所有している被相続人が、介護を必要として、老人ホームに入所していたときに亡くなってしまうというケースはよくあります。

その場合、宅地の評価額が80%減額となる『小規模宅地等の特例』を受けられるかが問題点となります。しかしその適用条件である、“被相続人が居住している状態”でなくても、条件を満たせば受けることは可能です。その条件とは、以下の3つです。

①自宅の利用状態
老人ホームに入所中の自宅の状態にも条件があります。まず、誰も住んでいないからといって貸付や事業用に使用する場合は、小規模宅地等の特例は受けられません。また、被相続人と生計を一にしていた親族以外が住んでいる状態でも受けられません。
老人ホーム入所後、被相続人の自宅以外の用途に供されていては認められません。

② 特例が受けられる
老人ホーム 老人福祉法等に規定する特別養護老人ホームなど、一定の要件を満たしている住居や施設に入所していることが条件です。
またそれ以外にも、終身利用権付きの有料老人ホームや高齢者住宅なども対象となります。

③要介護認定
相続開始の直前に、介護保険法などに規定する要介護認定等を受けていたことが条件となります。

上記3つの条件が満たされているかどうか、特に他人に自宅を貸し出すなど、特例が受けられない状態になっていないかどうか、しっかりとチェックしておくことが重要です。

相続について、気になることや悩んでいることがあれば、お気軽にご相談ください。

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