事業承継成功のために⑩/相続対策としての土地活用方法の変化

数字でみる相続

65~74歳

 国土交通省の『平成25年土地基本調査総合報告書』によれば、現住居・現住居以外ともに、土地の所有者として最も多かった年齢層は65~74歳でした。特に、現住居の土地を所有する65~74歳の世帯主は600万世帯を超えています。
 さらに報告書によれば、個人世帯が所有する土地は11万6,361km2、資産価値にして598.4兆円。日本の国土面積が約37万8,000km2ですから、国土の1/3近くは個人世帯が所有していることになります。相続対策をしないままに相続が発生してしまえば、税金や維持費のかかる空き地や空き家を所有することになってしまいます。所有者の高齢化は、そのまま相続人の高齢化にもつながります。早いうちから相続対策をしておきましょう。
 本誌3ページには、相続対策としての土地活用方法について説明しています。ぜひご一読ください。

事業承継成功のために⑩~新・事業承継税制の留意点~

事業承継の新税制は従前税制と比べて、税務メリットがとても大きくなっています。さらに、それぞれの要件も大幅に緩和されたため、利用しやすくなりました。そのため、前向きに検討している人も多いのではないでしょうか。しかし、税制の利用に際しては以下の6つの留意点があります。税制の要件とともにご紹介します。

事業承継税制の要件と利用の際の留意点とは

1. 5年以内に申請が必要
 新税制は、2027年12月末日まで、相続でも贈与でも利用できます。ただし、5年以内(2023年3月末日まで)に都道府県知事に対する承継計画の提出が必要です。

2. 3年要件に注意
 事業承継税制には3年という期間要件が多く見られます。

(1)贈与の場合=後継者が役員就任してから3年以上かつ20才以上
(2)資産管理会社の例外要件=3年以上継続して商品販売等の事業を行っていること
(3)現物出資・贈与の3年規制=同族関係者から現物出資又は贈与により取得した贈与前3年以内の資産が承継会社の資産時価合計の70%以上のときは承継税制等の適用を受けることができない。

 5年以内の申請を考えると、3年要件を満たすためには早急な着手が求められます。

3. 改正後事後要件に注意
 新税制においても、事後要件(贈与・相続後も遵守すべき要件)がありますが、特に以下の要件に留意しましょう。

(1)5 年間は代表者を辞められない。
(2)5 年間は承継した株式を売却できない。つまり、対象とした株式は持ち続ける必要がある。

4. 相続への切り替え時の要件に注意
 贈与時に要件を満たしていても、将来の相続時(切替時)にも要件を満たす必要があります。

5.株式評価減対策が必要
 納税を猶予されていた場合であったとしても株価対策は必要です。事後要件に違反して猶予された税金の納付が発生した場合や相続税の計算方法の問題(相続税は累進課税で計算されるため、株価が高いと株式以外の資産に対する税額が増加する)などがあり、株価はできるだけ低くしておいた方が有利です。したがって、ほかの方法との組み合わせによる株式評価減対策等は必要となります。

6. 多面的なアプローチが重要
 事業承継は税制面だけに注力すると失敗するケースも多くなります。税制面に加えて、ビジネス面、社会動向面、金融面からの多面的なアプローチが重要です。

不動産の活用(2)~相続対策としての土地活用方法の変化~

来たるべき相続に備え、所有する不動産で節税や収益の仕組みをできるだけつくっておきたいもの。昨今は土地所有者の高齢化が進み、相続対策としての土地活用が急務となっています。従来はアパートやコインパーキングなどが主流でしたが、近年は活用方法にも変化が生じています。今回は、最近の土地活用についてお伝えします。

自宅に住み続けられるよう改築や建て替えを

 自宅の土地を相続対策として活用する方法は、以下の通りです。

・二世帯住宅に改築する
 自宅を二世帯住宅にして推定相続人と住むことで、小規模宅地の特例による相続税の節税対策が可能になります。小規模宅地の特例は区分所有登記されていなければ、住宅の玄関などが別で完全に分離していても適用されるケースが多くなっています。
 懸念点は、建て替え費用がかかることです。

・マンションに建て替える
 自宅をマンションに建て替えて、その一室に住むことで、ほかの部屋からの家賃収入が見込め、建物の管理もしやすくなります。部屋ごとに建物や土地の区分登記をしておけば、将来的に一部売却も可能です。
 一方、区分登記をしておかなかった場合は、土地を一旦相続人の共有としてから遺産分割協議で所有者を決めなければならず、揉める可能性があります。空室や修繕費の計画も視野に入れておくべきでしょう。

非居住の土地には家賃が得られる建物を

 自宅以外に土地を所有している場合は、下記の方法が考えられます。

・マンションを建てて賃貸に出す
 建物を建てることで土地の固定資産税評価額や土地の相続税評価額の低下が見込めること、家賃収入が継続して入ってくることが利点です。一方で、やはり空室や修繕費のリ
スクは無視できません。

・高齢者向けの施設に土地を貸す
 郊外に広い土地を所有しているケースでは、高齢者向け施設などに土地を賃貸するという活用法も考えられます。自身が事業をせず土地を貸すだけなら、資金を借り入れるリ
スクもありません。
 また、最大20年という長期契約も可能なため、安定収入が見込めます。ただ、ほかに収益性の高いモデルが見つかったときに転換しにくいことなどがリスクです。
 被相続人、相続人の高齢化により、孫世代への相続は思った以上に早く来る可能性があります。相続対策として土地活用をするときには、孫世代以降のことも視野に入れ、長期的な計画を立てたいものです。

塩漬けにしていた“タンス預金”相続の際の申告は必要?

Q 亡くなった人がずっと自宅に保管していた現金などのいわゆる“タンス預金”。相続の際に申告は必要でしょうか?

 相続財産には被相続人が保有していた現金などの資産も当然含まれます。そのため、自宅に保管されているタンス預金についても申告の必要があります。

 相続税を計算するベースとなる相続財産には、タンス預金も含まれます。相続人は、被相続人が保管していたタンス預金などの現金を集計して申告する必要があります。
 しかし、タンス預金は、その存在を証明する証拠がないことも多く、近親者などが勝手に持ち去ってしまったり、紛失したりして、トラブルになることもあります。相続人になった場合、まず被相続人が保管していたタンス預金を確認しておきましょう。
 相続に際し、「タンス預金は、申告しなくても見つからないのでは… … 」と考えてしまいそうですが、税務署は確定申告をしている場合、被相続人の生前の所得金額を把握しており、税務調査では銀行や証券会社の口座を調査できます。
 生前所得に対して預金残高が少ない、死亡直前に多額の現金が引き出されている、などが調査で明らかになれば、相続人が事情の説明を求められることになるでしょう。過少申告や無申告が発覚した場合には、5~20%の加算税が課せられる可能性があります。隠蔽や偽装があると判断された場合には35~40%の重加算税が課せられます。そのような判断がなされないよう、正確に申告することが大切です。
 相続人にとって自宅などに保管されていた遺産は、正確に把握することが難しい財産です。また、貸金庫や他人に預けている財産も相続の対象になりますが、相続人が存在を把握できていないケースもあります。実際に相続になった時に困らないよう、被相続人と資産の保管状況を共有しておきましょう。

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