相続・贈与マガジン2019年11月号

「相続・贈与マガジン」2019年11月号では、個人事業主も事業を承継しやすくなる「個人版事業承継税制」や、老人ホーム入居も特例の対象になる「空き家特例改正」について特集しています。

2019年11月号 目次

4万6,724件とは? 数字で見る相続

東京商工リサーチの『2018年「休廃業・解散企業」動向調査』によれば、日本全国で2018年に休廃業・解散をした企業の数は4万6,724件でした。

2017年と比べて6,000件近くの増加となっています。

休廃業・解散した企業の代表者の年代では、70代が最も多い年齢層となっており、全体の37.53%を占めています。さらに60代以上の代表者となると全体の83.71%を占めており、高齢化が休廃業・解散の要因となっていることがわかります。スムーズな事業承継のためにも、早めに準備を始めておきたいものです。

「相続・贈与マガジン」2019年11月号では、事業が承継しやすくなる個人事業主の『贈与税や相続税の猶予・免税制度』について、詳しく取り上げています。ぜひご一読ください。

個人事業主も事業を承継しやすくなる『個人版事業承継税制』とは?

次世代経営者への事業承継が問題となるのは法人だけではなく、個人事業主であっても同じです。

これまでは事業承継の贈与税や相続税の猶予・免除の対象となるのは法人のみでした。ところが、2019年の税制改正によって、個人事業主についても贈与税や相続税の猶予・免税制度が創設されました。

今回はその制度の内容について解説していきます。

納税負担が減る「個人版事業承継税制」

事業承継では、店舗や設備、商品などを受け継ぐことになりますが、基本的に相続であれば相続税、贈与であれば贈与税の対象となります。

しかし「個人版事業承継税制」では事業承継にかかる贈与税や相続税の納税が猶予されます。そのため、承継時の不安定な時期に、納税で資産を減らさずに済むわけです。

さらに、先代事業者・後継者の死亡や法的な破産などの事情が生じれば、猶予されている贈与税や相続税は免除されます。

法人の事業承継の場合は経営者が交代します。しかし、個人事業主の事業承継の場合は手続き的には『先代事業者が廃業し、後継者が開業すること』になります。

また、事業承継で問題となりやすい屋号の承継 については、元経営者が自身の屋号を商号登記 していない限りは特に制限はありません。

納税の猶予・免除が適用されるための要件とは?

相続税や贈与税の猶予や免除は、以下にあげる事実が主な前提条件になります。

  • 贈与の場合は、贈与の日まで3年以上事業に従事していること
  • 相続の場合は、相続開始の直前に事業に従事していること
  • 贈与税の申告期限までに開業届を出しており青色申告の承認も受けていること
  • 先代事業者が青色申告の承認を受けていること

事業を廃止したり青色申告の承認が取り消されたりした場合は、免除にならず、贈与税や相続税の全額に利子税を加えた額を納付しなければなりません。

また、この制度は2028年12月31日までの時限措置のため、早めの対策が必要です。

相続税や贈与税が猶予・免税となると、事業を受け継ぎやすくなります。ぜひ制度を活用していきましょう。

空き家特例改正で、老人ホーム入居も特例の対象に

相続人が被相続人の住居を売却して一定の要件に当てはまる場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除される制度「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」、通称「空き家特例」

これまでは被相続人が老人ホームに入居した場合には適用外でしたが、2019年の改正で老人ホーム入居も特例対象となりました。具体的な変更点をご紹介します。

2019年の税制改正で見直された「空き家特例」

近年の少子化や人口減少により、避けられない問題が空き家の増加です。

持ち家に一人暮らしをしていた被相続人が亡くなるなどして、その家の相続や処分が行われないまま空き家として放置されると、家屋の倒壊や地域の治安悪化にもつながります。

2016年に創設した『空き家特例』は、そのような事態を防ぎ、相続や処分がスムーズに行われることを推進するための特例制度です。

具体的には、1981年5月31日までに建てられた家が被相続人が亡くなって空き家となった場合、相続人が耐震リフォームをして新耐震基準に適合させるか、もしくは家を取り壊して更地にして売却すると、譲渡所得から3,000万円が控除されるというものです。

従来の空き家特例では、要件として「相続開始の直前に被相続人が住居として使用していたこと」が求められました。そのため、被相続人が住んでいた家を出て老人ホームに入居し、そこで死亡した場合などは、この要件を満たさないために譲渡所得の控除が受けられないことが問題となっていました。

この点をふまえて行われた2019年の税制改正により、被相続人が住んでいた家を離れて老人ホームに入居してから月日が経過した場合でも、一定の要件を満たせば特例を受けられるようになりました。

空き家特例が適用にならないケースも

現在、被相続人が老人ホームに入居していた場合に、相続人が空き家特例を受けるためには下記の要件等があります。

  • 被相続人が要介護・要支援認定などを受けていた
  • 老人ホーム入居直前まで対象となる自宅に一人で住んでいた
  • 老人ホームに入居してからも、被相続人の物品等を保管している
  • 被相続人が老人ホームに入った後に第三者が居住および事業として利用していない

しかし、それでも空き家特例の要件を満たさないケースがあります。

たとえば、被相続人が老人ホームではなく子どもの家に移ったり、子どもの家に移った後で老人ホームに入居した場合には、空き家特例は適用されませんspan>。また、家屋のリフォームや取り壊しについては、譲渡前に行った場合のみに空き家特例が適用されますので、注意が必要です。

親族が持ち家で一人暮らしをしている場合、早めに話し合いをして対策を立てておきましょう。

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相続を相談できる専門家には、どんな人がいる?

相続についてそろそろしっかり決めておきたく、専門家へ相談を考えています。しかし、さまざまな専門家がいて、どんな人を選べばよいかがわかりません。
相続関連の専門家には、税理士、行政書士、司法書士、弁護士などがいますが、まずは相続税の試算を行い、そこから状況に応じて相談先を決めましょう。

たとえば、不動産の所有権移転登記手続きは、司法書士の専門になります。そして、相続税に関する個別の相談や相続税申告などの税金に関する手続きの専門は税理士です。

また、土地の境界を確定して地積測量図を作成する専門家は、土地家屋調査士です。

遺産分割協議書や遺言書の作成は、弁護士・司法書士・行政書士が行えます。ここで選ぶポイントとなるのが、紛争性や予算です。

揉めてしまって調停や訴訟による解決が必要な場合、また、現時点では揉めていなくても紛争の火種があるという場合は、弁護士に相談するのがよいで しょう。逆に、円満に話し合いが進み、争うことは考えられないという場合や、できるだけ予算を抑えたいため、ポイントだけフォローして欲しいというような場合には、行政書士や司法書士に作成を依頼するケースも多くあります。

相続が発生したとき最初に押さえておきたいのは、「相続税はいくらかかるのか」です。

相続税は基本的に現金で一括して納付しなければなりません。相続財産がいくらかを調査し、そこから割り出される相続税の正確な額をあらかじめ知っておけば、相続する財産をどう分けるか、どの財産を処分しておくかなどの対策が立てられます。

まずはご自身の相続財産の把握と相続税額の試算を行い、そこから状況に応じて相談先を決めていくのがよいでしょう。

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