相続・贈与マガジン2019年12月号

年末年始、家族が集まる時期は「相続と遺言」について考える貴重な機会です。2019年12月の「相続・贈与マガジン」では、遺産分割の不公平を解消する方法や、不動産を売った人・買った人が1年以内にすべき税金手続きについてお話しします。

2019年12月号 目次

12,166件とは? 数字で見る相続

2017年の「司法統計年報」によれば、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件数は年間で12,166件でした。

遺言書がない相続の場合は相続人の間で遺産分割について話し合うことを考えると、相続人の間では解決せずにトラブルが深刻化してしまった件数が、年間でこれだけの数に上っていることがわかります。

さらに国税庁の「平成29年分の相続税の申告状況について」によれば、相続財産全体における不動産の割合は41.9%(2017年)で、全体の5分の2以上を占めていました。

不動産は不公平な分割になりやすいこと、相続財産に占める割合が大きいことから考えると、遺産分割の紛争は多いと思われます。トラブルを未然に防ぐためには、早めに対策を取りたいところです。

「相続・贈与マガジン」2019年12月号では、不動産等を相続人の間で公平に遺産分割する方法について、詳しく取り上げています。ぜひご一読ください。

相続人の間で遺産分割する際、不公平ととらえられるケースとは?

相続財産は相続人の間でできるだけ公平に分割したいと思うものです。相続財産が預貯金だけなら公平な分割はむずかしくありませんが、実際は複数の不動産や有価証券などが含まれることが多く、公平に分けることが困難です。

このような多種多様の相続財産を分けるとき、一見公平に見えても実は不公平ととらえられるケースとその注意点をご紹介します。

不公平ととらえられる遺産分割の三つのケースとは

不公平になりがちな遺産分割のケースは主に三つあります。

(1)代償分割の場合

代償分割とは、「1億円相当の土地を長男がすべて相続する代わりに、もう1人の相続人である次男には5,000万円の現金を長男から代償金として渡す」といったものです。資産価値1億円の2分の1にあたる現金が次男に渡っているため平等にも思えますが、実はそうでもありません。

土地を相続した長男は、毎年固定資産税を支払わなければなりません。もし土地を売って現金を得ようとした場合、譲渡益が出てしまったら譲渡所得税も課税されます。平等に相続財産を分けるのなら、こうしたコストも加味して考える場合があります。

(2)片方しか公道に面していない土地を分ける場合

片方が道路に面している土地を2人で相続するときには、道路に面している部分とそうでない部分で2分割することがあります。面積的に2分の1で分けてしまうことがありますが、書面上は平等に見えても資産価値は大きく異なるため、実は不平等になってしまうのです。

道路に面していない土地は、そのままでは建物を建てることができません。また、土地に入るために他人の土地を通らなければならないこともあって、公道に面している土地に比べると資産価値は大きく目減りしてしまうのです。

こうしたケースでは、土地面積ではなく資産価値を基準に分割することを考えましょう。

(3)相続人が事業承継する場合

「長男が会社を継ぎ、1億円相当の株式を相続した。もう1人の相続人である次男は2,000万円の現預金や不動産を相続」というような事業承継の場合は、後継者(長男)に渡る相続財産が多いケースがあります。

このケースでは長男が次男よりも8,000万円多く相続しているため、次男から見れば不公平にも思えます。しかし、長男は現預金や不動産を一切受け取っていません。長男からすれば、次男の方が恵まれていると感じてしまうかもしれません。

このように書面の上では平等に分割しているように見えても、実態は平等とはいえないケースは少なくありません。相続財産の分割は実態に即して検討しましょう。

不動産を売った人、買った人が1年以内にするべき税金手続きは?

相続対策として、残しておいても誰も住まない家や、管理の手間だけがかかってしまうような土地は相続が発生する前に処分しておきたいものです。

逆に現預金が多い場合は、不動産を購入するケースもあります。では、不動産を売買した年にはどのような手続きが必要となるのでしょうか。

行っておくべき税金まわりの手続きをご紹介します。

不動産売買で発生する税金の手続きとは?

一口に不動産売買の税金の手続きといっても、ケースごとに異なります。

(1)不動産を売却した場合

不動産を売却したときには、購入時の価格よりも売却価格が高い場合(譲渡益が出た場合)と低い場合(譲渡損失が出た場合)ですべきことが異なります。

まず譲渡益が出た場合には、譲渡所得税および住民税が課税される可能性があります。ただし、特別控除があるため、たとえば自宅を売却した場合は3,000万円の控除が受けられます。

一方、譲渡損失が出た場合には、譲渡所得税や住民税は課税されません。

(2)不動産を購入した場合

不動産を購入したときには「不動産取得税」という税金を支払わなければなりません。こちらは管轄の都道府県税事務所に申告書を提出して手続きを行います。

また、手続き期限はないものの、早めに不動産の所有権移転登記手続きをしておく必要があります。この際、法務局で登録免許税を納税することになります。

一方、住宅ローン減税制度を利用することで所得税や住民税が控除されます。

(3)同一年度内に不動産を売り、購入した場合

この場合は、譲渡損益を相殺することができます。たとえば譲渡益が5,000万円、譲渡損失が3,000万円だったとしたら、相殺して譲渡益が2,000万円 として申告することができるのです。

この2,000万円については、ほかの所得との損益通算はできません。しかし、売却した年の1月1日時点で5年を超えて所有している自宅を売って譲渡損失が生じた場合は、ほかの所得との損益通算ができるうえ、損失が0になるまで、譲渡年の翌年から3年間にわたって控除することができます。

納税する場合も控除となる場合も、さまざまな手続きが必要となりますので、漏れのないように注意しましょう。

年末年始、家族が集まるときに整理しておきたい相続人と相続財産

いざ相続するときになって揉めないように、年末年始、家族や親戚が集まるときに相続関連の説明をしたいと思っています。ポイントを教えてください。
相続に関しては、被相続人の存命中から「相続人の確定」「相続財産の内容」「もしものときの相談先」を整理して、相続人に伝えておくことがポイントです。

相続に関することは、被相続人の存命中に決めておいたほうがいいでしょう。遺言書がない相続の場合は特に、相続人全員で相続財産をどのように分けるかを話し合わなければならず、トラブルの元になったり、手間がかかったりします。

相続人は、代襲相続が発生していないかを確認して確定します。そして、相続人の中に行方不明者はいないか、海外に行っている人はいないかなどもあわせて調べておきましょう。

また、相続財産が未確定のまま相続が始まってしまうと、相続人が相続財産を調べなければなりません。相続人の負担を増やさないためにも、あらかじめ相続財産を確認しておくことをおすすめします。

不動産がある場合は、大まかな資産価値を把握しておきます。ネット上に有価証券など電子財産がある場合は、ログイン情報やパスワードなどを記録して、相続人がわかるようにしておきましょう。あわせて、相続税を試算し、どのようにして払うかについても考えます。

さらに、相続人がするべきこと、相談先などをまとめて残しておくと、相続人が困らずにすみます。たとえば、「家のことは○○に電話して」「葬儀は○○に頼んである」「相続税の相談は○○にしている」といった具合です。

スムーズに相続を進めるためには、被相続人が家族や親戚に、相続人や相続財産などについて説明し、情報を共有しておくことが大切です。

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