相続・贈与マガジン2020年3月号

借金の引き継ぎなど相続にまつわるトラブルを解消する手段「相続放棄」。最近は親世代が所有する空き地や空き家の処分に困って相続放棄に走るケースも増えています。しかし、相続放棄だけでは相続人の負担をすべて減らすことはできません。

2020年3月の「相続・贈与マガジン」では、相続放棄について詳しく説明するほか、相続発生から相続税納付までのスケジュールもまとめています。

2020年3月号目次

24.4%とは?数字で見る相続

2018年、「家庭裁判所の家事審判新受事件の事件別件数」のうち、相続放棄が占める割合は24.4%、件数は21万5,320件と、家事審判新受事件のなかで最も多くなっていました。

相続放棄は、借金などの負債だけでなく預貯金や不動産などのすべての相続財産を放棄する手続きです。相続財産のうち、プラスの財産よりもマイナスの財産が多いケースで相続放棄が活用されているだけでなく、親世代が所有する空き家や空き地の処分に困って相続放棄をするケースも増えています。

ただし、相続放棄をすれば相続にまつわるすべてのトラブルから相続人が解放されるわけではありません。相続人の負担にならないよう、不要な相続財産はできるだけ早いうちに整理しておきたいところです。今回の「相続・贈与マガジン」では、相続放棄について、詳しく取り上げています。ぜひご一読ください。

相続の手続きを円滑にする遺言執行者のメリットと注意点とは?

相続人の数が多い場合や、相続人同士が揉めてしまい、円滑に相続手続きが進まないことが早い段階からわかっている場合の対策として、親族や専門家を遺言執行者に選任する方法があります。そこで、誰を遺言執行者にすればよいのかをはじめ、それぞれのメリットと注意点について、紹介します。

遺言執行者のメリットと選任が必要となるケースとは?

遺言執行者とは「遺言の内容を実現する人」のことをいいます。たとえば、遺言書で「長女に預金を相続させる」などと相続人と相続財産を指定していたとしても、金融機関で手続きを行うときには、原則として相続人全員の印鑑証明書が必要になるなど、ほかの相続人の協力が不可欠です。

しかし、あらかじめ遺言執行者を選任しておけば、ほかの相続人から印鑑証明書をもらわずに、基本的な相続手続きを進めることができるため、スムーズに財産承継ができるというメリットがあります。

遺言執行者は必ずしも選任しなければならないわけではありませんが、遺言書のなかで子どもの認知が行われた場合や、相続人の廃除または廃除の取消が行われている場合には、遺言執行者を選任しなければなりません。

もし遺言書のなかで遺言執行者が選任されていない場合、家庭裁判所で選任することもできます。

親族、専門家を選定した場合のそれぞれのメリットと注意点

遺言執行者は長男や長女、配偶者などの相続人や親族に依頼するケース、弁護士や司法書士、税理士といった専門家に依頼するケースがあります。

親族を選定したときのメリットと注意点

事情を知っている親族を遺言執行者に選定すれば、段取りが円滑に進むというメリットがあります。

ただし、相続財産が多い場合は手続きが煩雑になるため負担が大きいことや、ほかの相続人とのやり取りで精神的に疲弊する可能性もあるため、その場合は第三者がよいでしょう。

専門家に依頼したときのメリットと注意点

専門家に依頼することで相続人や親族の手間が軽減します。ただし、被相続人が相続人に相談せずに遺言執行者を選任している場合は相続人との間でトラブルになる可能性もあります。あらかじめ相続人には伝えておきましょう。

以上の注意点を踏まえ、誰を遺言執行者にすればメリットがあるのかを考えて選出しましょう。

亡くなった親の借金を背負いたくない!「相続放棄」で解決するべき?

親が亡くなり相続財産を確認したところ、多額の借金をしており、このまま相続すると借金を背負うことになる…。そんなときに活用できるのが「相続放棄」という制度です。

一方、「可能な範囲で借金を返済したい」「残したい財産がある」などの場合は「限定承認」のほうがよいこともあります。今回は、相続放棄と限定承認の概要をご紹介します。

特定の財産を放棄したいなら「限定承認」を選択する

相続放棄の制度は民法に定めがあり、相続放棄すれば相続人は初めから相続人ではなかったことになります。つまり借金だけでなく、不動産や預貯金など全ての相続権を失うことになります。

相続放棄は相続人に非常に大きな影響を及ぼすにもかかわらず、「相続開始を知ってから3カ月以内」という短い期間に限られています。その間に相続財産を調べ、全てを放棄するのかどうかを判断しなければなりません。

ただし、相続放棄では全財産を放棄するため、必要な財産も手放すことになります。それを回避したい場合には「限定承認」という制度を活用します。限定承認とは、被相続人にプラスの財産と借金などのマイナスの財産があるときに、プラスの財産の範囲内で借金を返済し、残った財産を相続するという制度です。

この制度を活用すれば、被相続人の借金を自腹を切って肩代わりする事態は避けられます。また、相続放棄をしてしまうと手放したくない不動産なども一切手元に残すことができなくなりますが、限定承認ならこれも可能となります。

では、相続放棄後に多額の預貯金が見つかるなど、新たな財産債務が発覚した場合に相続放棄を取り消すことはできるのでしょうか。

原則として一度放棄したものを取り消すことはできませんが、他の相続人から騙されていた、重大な錯誤があったなどの事情があれば取消が認められることもあります。

なお、限定承認であれば、後から発見されたプラスの財産も相続することができます。

不動産を相続放棄しても管理責任は残ることに注意

最近では空き家問題などが増えていますが、不要な不動産も相続放棄すればよいと思っているとしたら注意が必要です。最終的に全ての相続人が相続放棄をしたとしても、不動産の管理責任は相続人に残るからです。

管理責任が残るということは、万が一管理せず家が倒壊して隣の家を壊した場合などに、損害賠償責任を追及される可能性があるということです。そうならないためには、相続財産管理人という人を選任して管理を任せる必要があります。

相続放棄や限定承認をするためには、相続財産の状況を調査したうえでどちらを選択するのか判断し、家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません。スムーズに進めるためには、まずは相続財産の確定を早めに行うことが肝心です。

早く準備を始めたい!相続に関するスケジュールとは?

相続では財産の移転などの手続きが生じるのはもちろんですが、相続税が課税されれば納付しなければなりません。相続税の申告と納付期限は相続開始を知った日の翌日から10カ月となっており、遅れた場合はペナルティが課されることもあります。

そこで、相続税申告までの10カ月の間に具体的に何をしなければならないか、相続税納付までのスケジュールを紹介します。

相続のポイントは3カ月目、4カ月目、10カ月目

①相続開始

被相続人が死亡したら、まず取りかからなければならないのが「相続人の確定」「相続財産の調査」「遺言書が残っているかの確認」です。

相続放棄や限定承認の手続きは相続開始を知った日から3カ月以内という短い期限となっているため、それまでには相続財産をすべてピックアップしておかなければなりません。

②相続放棄、限定承認(3カ月以内)

相続人は、相続財産を全て放棄するか(相続放棄)、相続財産の範囲内で負債も相続するか(限定承認)、それともすべての財産・負債を相続するか(単純承認)を選べます。詳しくは特定の財産を放棄したいなら「限定承認」を選択するをご一読ください。

③被相続人の準確定申告(4カ月以内)

被相続人に生前所得があり、所得税を納税しなければならない場合や、限定承認を行った場合には、死亡した年の1月1日から死亡した日までの期間について確定申告を行う必要があります。

これを準確定申告と呼び、相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に行わなければなりません。相続人が複数いる場合は相続人の連署による申告が原則です。

④相続税の申告・納付(10カ月以内)

相続財産を調査した結果、相続税を納付しなければならないことがあります。この場合は相続税の申告と納付の手続きを行います。これは相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内と定められています。

申告漏れや申告間違いがあるとペナルティとして加算税や延滞税が課税されることがありますので、算出は慎重に行いましょう。

ポイントは、相続放棄や限定承認の期限である3カ月目、準確定申告の期限である4カ月目、相続税の申告・納付期限である10カ月目です。早めに準備を始めましょう。

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