相続・贈与マガジン2020年7月号

被相続人がどのような財産を持っていたか相続人が完全に把握していることは稀です。せめて「○○と取引がある」ということだけでもわかっていれば、財産が相続手続きから漏れることはありません。
不動産や預貯金と違い、特に分かりづらいのが株式等。どのように手続きするのか、また海外資産が見つかった場合どうしたらよいのか、2020年7月の「相続・贈与マガジン」では、手続き手順やリスクについてまとめています。

 

2020年7月号目次

13.0%とは?数字で見る相続

国立社会保障・人口問題研究所の『第15回出生動向基本調査(2015年)』によれば、結婚後5~9年の夫婦で子どもがいない割合は13.0%で、年々増加傾向にあります。子どもがいない夫婦間で相続が起こった場合、相続人は被相続人の父母となり、父母が死亡している場合は兄弟姉妹となります。兄弟姉妹がすでに死亡している場合は姪・甥となり、配偶者や子どもが相続人の場合に比べると相続トラブルが起こりやすくなります。

ちなみに同調査によれば子ども1人の割合は28.2%で、子ども1人の割合も増加傾向にあります。1人の場合、両親が2人とも亡くなったときの負担の大きさが課題です。家族構成や推定相続人によっても問題が異なるため、事前に対策を立てましょう。

株式を相続する際の手続方法と手続を忘れたときのリスク

相続が発生したとき、最初にするべきこととして相続人と相続財産の特定があります。預金や不動産などわかりやすい財産は特定しやすいものですが、忘れがちなのが株式などの有価証券です。では、株式の相続を忘れてしまうとどのようなリスクが生じるのでしょうか? 株式相続の手順や注意点を押さえておきましょう。

被相続人の株式を相続する手順とは?

被相続人が株式を保有していたときには、以下のような手順で相続を進めていきます。

(1)株式を特定する

まずは、被相続人が保有していた株式を特定しなければなりません。上場会社の株式を保有している場合には、取り扱っている証券会社に問い合わせて確認しましょう。非上場会社の株式を保有している場合には、その会社に問い合わせましょう。

(2)株式の評価額を計算する

株式は金額に換算して相続財産に加えなければなりません。この計算方法は、上場会社と非上場会社とでは異なります。非上場会社の株価の計算方法は複雑ですので、税理士などの専門家に任せた方がよいでしょう。

(3)株式をどのように分けるかを決め、名義書換などを行う

株価が算出できたら、株式を相続人でどのように分けるかを決めます。
主な分け方としては、次の3種類があげられます。

●現物分割
株式そのものを分割する方法
●換価分割
株式を全て売却して、得たお金を分割する方法
●代償分割
相続人の一部が全ての株式を取得して、代わりに相当分の現金を他の相続人に渡す方法

株式の相続をし忘れると大変なことに

法律により、上場株券はすべて電子化を実施しています。そのため、株を保有していることを相続人が把握できずに相続手続ができないケースもあります。調べる方法としては、被相続人宛の郵便物の中に株主総会や株主優待の案内などがないか、カレンダーやハガキなどで証券会社名義のものはないか、通帳の明細に証券会社の名前が入っていないかをチェックするようにします。

では、株式を相続人同士でどのように分けるかを決め忘れてしまったら、どのようなリスクがあるのでしょうか。株式を含めて再計算したときに相続税が上がった場合、追加で相続税を納税しなければなりません。相続税の申告期限は『被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月』と決まっていますが、この期限を越えてしまうと延滞税がかかります。また、株式を換価分割するときにはいったん売却しますが、譲渡益が出たら税金がかかることがあります。

スムーズに相続をするためにも、被相続人が生きているうちから、どのような株式があるのか、確認しておくことをおすすめします。

海外にある不動産などの財産に日本の相続税はかかる?

日本に住んでいながら海外に不動産などを持っている場合、日本に財産があるのと同じように相続税がかかります。しかし、ある要件を満たせば、海外財産に日本の相続税がかからないこともあります。海外財産がある場合、どのように相続税対策を行えばよいのかを見ていきましょう。

財産が海外にあっても相続税の対象となる

相続税の考え方は、国によって異なります。被相続人の居住国と相続財産のある国が異なる場合、被相続人の国籍がある国の相続税がかかると定めている国もあれば、相続財産のある国の相続税がかかると考えている国もあります。日本では『被相続人の国籍がある国の相続税が相続人にかかる』という考え方を採用しています。そのため、被相続人が日本に住んでおり、海外に不動産や預金などの財産を持っている場合には、その海外財産に対して日本の相続税がかかるのです。

では、被相続人が海外に住んでいれば日本の相続税はかからないのでしょうか?

海外にある財産が日本の相続税の対象にならない要件とは

法律では『被相続人、相続人ともに相続開始前10年以上海外に居住している場合には、日本の相続税はかからない』としています。つまり、被相続人と相続人のどちらか一方が海外に10年以上住んだだけでは要件は満たされず、この場合の海外財産には日本の相続税が課税されることになるのです。ちなみに、被相続人が外国人の場合は、被相続人の母国が相続税についてどのように定めているかに準じることになります。海外財産を相続するときには、被相続人と相続人がどの国にどれだけの期間住んでいるのかが重要になります。海外財産を所有する方は、相続税対策としてこの点を明らかにしておきましょう。

相続に備えてセレモニーノートに書いておくべきこととは?

終活の一つとして注目されているセレモニーノート。エンディングノートとも呼ばれるもので、書店などで購入することができます。セレモニーノートを残される相続人のために活用するには、どのようなことを書いておけばよいのでしょうか。今回は、セレモニーノートの基本を説明します。

相続準備がされていないと残された人はひと苦労

相続準備もしないままに突然相続が発生してしまった場合、相続人はまず、法定相続人を特定し、すべての相続財産を調べあげなければなりません。不動産や有価証券などがあるときは、評価額を出して相続財産を確定します。そのうえで、さらに手続を行うことになります。相続は一生のうちに何度も経験することではないため、相続人は手探りでこれらの膨大な仕事に追われることになってしまいます。そこで、相続人の負担を減らすためにも『セレモニーノート』に必要なことを書き残しておくとよいでしょう。セレモニーノートは法的効力があるものではないため、細かいことで悩む必要はなく、たくさんの情報を書き残すことができます。

セレモニーノートに書いておくべきこととは?

セレモニーノートには、少なくとも以下の事柄は書き残しておきましょう。

●今、所有している財産(借金がある場合もすべて)
●自分を中心とした家系図(再婚している場合や婚外子がいる場合も書いておく)
●税理士や司法書士など、日頃から相談している専門家がいる場合はその情報
●遺言書を残しているかどうか

市販のセレモニーノートには記入する項目が多いものもありますが、すべてを埋める必要はありません。わかるところや大事なところだけでも書いておくようにしましょう。

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