相続放棄をした空き家はどうなるの?

相続放棄した後、相続財産はだれが管理する?

(民法939条)
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

相続人は、相続財産を自己の財産におけるのと同一の注意をもって相続財産を管理しなければなりませんが、相続放棄をした場合には、この管理義務を負いません(民法918条1項)。

相続放棄をした者が被相続人の財産を管理している場合、速やかに他の相続人や新たに相続人となった者に管理を引き継ぐことになりますが、直ちに引き継げない場合は、相続財産の管理者が不在とならないよう、他の相続人や新たに相続人となった者が相続財産の管理を開始できるまでの間、相続放棄をした者は相続財産の管理を継続しなければなりません(民法940条1項)。

相続人の全員が放棄した場合

相続人の全員が放棄してしまい、相続人の存在が明らかでないときは、

相続財産は法人となります(民法951条)。

相続放棄をした者は、いつまでも管理し続けるのではなく、家庭裁判所に相続財産管理人を選任を求め(民法952条1項)、相続財産の管理を相続財産管理人に引き継ぐことができます

結論

相続放棄をした場合は、他の相続人や相続放棄によって新たに相続人となった者が本件空き家の管理を開始することができるまで、自己の財産と同一の注意義務をもって本件空き家の管理を継続する。

相続人の全員が相続放棄したことにより、相続人の存在が明らかでない場合は、家庭裁判所に対して相続財産管理人の選任を求め、その相続財産管理人に管理を引き継ぐことができる。

最後の相続人は必ず相続財産管理人を選任しなければならないのか

通常は誰も申立てをしないからといって最後に相続放棄をした相続人が申立てをする義務はありません。
相続財産管理人選任の申立ては、実費や管理人への報酬の担保として数十万円以上の予納金が必要とされ、かつ長期間を要することもあることから、申立てされないことも多いのが実情です。

選任申し立てされるパターンとしては、借金を返して欲しいという債権者や財産の分与を求める特別縁故者(内縁関係の人、療養看護に努めた人等)や不動産の共有者などからの申立てです。とはいっても、相続財産管理人が選任される前に、建物の倒壊などで他人に損害を負わせた場合には損害賠償請求される可能性もあるため、最後に相続放棄をし相続財産の管理を行っている者は、利害関係人として相続財産選任の申し立てができると解されているようです。

相続財産管理人の選任を請求の要件

・利害関係人であること
債権者や受遺者に対して履行をする必要がある場合など、具体的に相続財産管理人を選任して清算手続きを行ってもらう法律上の利害関係があること

・遺産があること
遺産がほとんどない場合、費用倒れになってしまい、清算をする意味がないため、相続財産管理人を選任する必要がないからです。

・相続人の有無が明らかでないこと
相続人がいると相続財産管理人を選任する必要はないからです。

相続財産管理人について

相続財産管理人は,被相続人の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い,清算後残った財産を国庫に帰属させることになります。

なお,特別縁故者(被相続人と特別の縁故のあった者)に対する相続財産分与がなされる場合もあります。

・申立先
被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

・申立てに必要な費用
①収入印紙800円分

②連絡用の郵便切手

③官報公告料3775円

※申立てされる家庭裁判所へ事前にご確認ください。

・申立てに必要な書類
①申立書

②被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

③被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

④被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

⑤被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

⑥被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

⑦代襲者としてのおいめいで死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載がある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

⑧被相続人の住民票除票又は戸籍附票

⑨財産を証する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書),預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)

⑩利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),金銭消費貸借契約書写し等)

⑪財産管理人の候補者がある場合にはその住民票又は戸籍附票   <裁判所ウェブサイトより引用>

※申立てされる家庭裁判所へ事前にご確認ください。  

相続財産管理人の選任と司法書士

家庭裁判所に申し立てをする際は、上記をご覧いただければわかる通り、とにかく多くの戸籍等を求められます。それだけの戸籍を取得するのは、容易なことではありません。何か所も何度もたくさんの役所に手配しなければならないことも多く、かなり遠方の役所への手配が必要な場合も多くあります。労力も時間もかなりかかります。
そこでおススメなのは、

「相続財産管理人の選任申立ては、司法書士に依頼する」ということ。

司法書士は家庭裁判所に提出する申立書の作成だけでなく、戸籍等の取得も得意です(得意でない司法書士もいるかもしれませんが・・・)。弊所に限っては無駄なく、迅速に対応します。

相続財産管理人選任の申立てをご検討の際は、お気軽に清澤司法書士事務所にご相談ください。

この記事の執筆・監修

清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所の代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。

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