最終更新日:2026年4月22日
連絡のタイミングと引き出しルールとは
家族が亡くなったとき、「銀行口座はすぐ凍結されるのか」「いつ金融機関に連絡すべきか」と戸惑う方は少なくありません。悲しみの中でも、現実的な手続きは避けて通れません。
ここでは、口座凍結の仕組みとトラブルを防ぐためのノウハウを解説します。
目次
口座はいつ凍結される?連絡のタイミング
結論からいうと、銀行口座は「死亡の事実が金融機関に伝わった時点」で凍結されます。金融機関が自動的に死亡を把握する仕組みはなく、遺族などからの連絡がきっかけになります。
そのため、連絡がなければ口座は一見そのまま使えてしまいます。キャッシュカードと暗証番号が分かれば、ATMでの引き出しも技術的には可能です。ただし、これはあくまで「できてしまう」というだけで、法的・実務的には慎重な対応が求められます。
知らないうちに誰かが引き出してしまうと、後の遺産分割で深刻な対立を招くことがあります。口座凍結は不便に感じられる一方で、相続財産を保全する重要な役割を担っています。早めに金融機関へ連絡することが、結果としてトラブル防止につながります。
凍結後に困ることと、2019年改正の救済制度
口座が凍結されると、原則として遺産分割協議が成立するまで自由に預貯金を引き出すことはできません。葬儀費用や入院費の精算など、急な支払いに直面した場合に困るケースが多く見られます。
この点を踏まえ、2019年(平成31年/令和元年施行)の民法改正で「預貯金の仮払い制度」が創設されました。これにより、相続人は単独で、一定額まで払い戻しを受けることが可能になっています。
具体的には、「口座残高の3分の1 × 自身の法定相続分」が上限です(金融機関ごとに上限150万円の制限あり)。たとえば、配偶者と子ども2人のケースでは、配偶者は2分の1の法定相続分をもとに計算されます。
もっとも、この制度を利用するには戸籍謄本などの書類提出が必要で、即日で現金化できるとは限りません。実務上は、時間的余裕を持って準備を進めることが重要です。
凍結前に引き出す場合の注意点
「凍結される前に必要なお金を引き出しておきたい」と考えるのは自然なことです。葬儀費用など、現実に支払いが発生する場面もあるでしょう。
ただし、この場合に最も重要なのは、相続人全員の事前の了承を得ることです。
一人の判断で引き出してしまうと、「使い込みではないか」と疑念を持たれ、後の遺産分割協議に悪影響を及ぼす可能性があります。実務上は、必要最低限の金額にとどめ、用途を明確にし、領収書を必ず保管しておくことが不可欠です。
この「説明できる状態」を整えておくことが、相続人間の信頼関係を維持するうえで重要なポイントになります。
生命保険は別枠で考える
預貯金と混同されがちですが、生命保険金は原則として相続財産とは別の扱いになります。受取人が指定されている場合、その保険金は「受取人固有の財産」として扱われ、遺産分割協議の対象にはなりません。
そのため、比較的速やかに現金を受け取ることができ、当面の資金需要への備えとして有効です。
さらに、生命保険には「法定相続人の数 × 500万円」という相続税の非課税枠が設けられており、税務面でもメリットがあります。相続対策として、あらかじめ活用を検討しておく価値があります。
まとめ:早めの連絡と「見える化」でトラブル回避
口座凍結は突然の不便を伴いますが、相続財産を守るための重要な仕組みです。連絡のタイミングを理解し、凍結後の制度を把握しておくことで、必要以上に慌てることはありません。
特に重要なのは、相続人全員の合意を意識して動くこと、そしてお金の流れをきちんと記録しておくことです。これらを押さえるだけで、多くのトラブルは未然に防ぐことができます。
なお、2024年からは相続登記の義務化も始まり、相続手続き全体の重要性はこれまで以上に高まっています。金融手続きも含め、早い段階で全体像を把握することが求められます。
迷った場合は、専門家に相談することで手続きの見通しが立ちやすくなります。清澤司法書士事務所では相続全般のご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
【参考コラム】
相続で銀行口座が分からないときの調べ方
この記事の執筆・監修
清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所の代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。















