最終更新日:2026年3月19日
変わりゆく供養のかたちと、その現実
近年、「墓じまい」という言葉を耳にする機会が増えています。「お墓離れ」や「墓じまいトラブル急増」といったニュースも多く聞かれ、「自分も考えるべきなのだろうか」「先祖に対して罰当たりではないか」と戸惑う声も少なくありません。
しかし、実際の墓じまいは、そうしたイメージとは異なる側面を持っています。まず理解しておきたいのは、墓じまいとは単に「お墓をなくすこと」ではないという点です。
墓じまいとは何か?供養をやめる手続きではない
墓じまいとは、現在あるお墓から遺骨を取り出し、墓石を撤去して墓地を更地に戻し、使用権を墓地の管理者へ返還する一連の手続きを指します。ただし、本質はその「後」にあります。
取り出した遺骨は、別の場所へ移され、供養は継続されるのが一般的です。つまり墓じまいは、供養を終わらせる行為ではなく、「供養の場所と形を見直す手続き」といえます。
実際、改葬(遺骨の移転)の件数は近年増加傾向にあり、厚生労働省の統計でも過去最多を更新しています。この増加は「お墓をやめる人が増えた」というよりも、「現在の生活に合った形へ移行している人が増えた」と理解する方が実態に近いでしょう。
墓じまいが増えている背景
墓じまいが広がっている背景には、個人の価値観の変化というよりも、社会構造の変化があります。
特に大きな要因として挙げられるのが、お墓の立地と継承の問題です。地方にある先祖代々のお墓を、都市部で生活する子や孫が引き継ぐケースでは、距離の問題から定期的な管理やお参りが難しくなります。また、少子化や未婚率の上昇により、そもそもお墓を引き継ぐ人がいないという状況も増えています。
こうした事情から、多くの方が「お墓が不要」と考えているのではなく、「現実的に維持できない」という理由で墓じまいを検討しています。高齢によりお墓参りが難しくなった、子どもに負担をかけたくないといった思いも、その背景にあります。
墓じまい後の遺骨の行き先
墓じまいの後、遺骨は新たな供養先へと移されます。その選択肢は近年多様化しており、従来の一般墓に加えて、さまざまな形態が広がっています。
なかでも増加しているのが、寺院や霊園が管理・供養を行う「永代供養墓」です。継承者を必要とせず、一定期間または永続的に供養が続けられる仕組みであるため、「子どもに負担を残したくない」という理由から選ばれるケースが増えています。
そのほかにも、自然に還ることを重視した樹木葬、屋内施設で管理される納骨堂、遺骨を粉末化して自然に撒く散骨、自宅で保管する手元供養など、供養の方法は大きく広がっています。
現在は、従来型のお墓とこうした新しい供養方法が並存しており、それぞれの価値観に応じた選択が可能な時代になっています。
費用と手続き―事前準備が重要
墓じまいを検討する際、多くの方が気にされるのが費用と手続きです。
費用は、墓石の撤去費用、遺骨の取り出し・移送費用、新たな納骨先の費用などによって構成されます。一般的には数十万円程度が一つの目安とされますが、墓地の広さや立地条件、移転先の内容によって大きく変動します。そのため、複数の業者から見積もりを取り、内容を比較することが重要です。
手続きについては、「改葬許可申請」が中心となります。現在のお墓がある市区町村で許可を取得し、墓地管理者の承諾、新たな納骨先の受入証明書の取得などを順序立てて進める必要があります。これらの手続きは一見複雑に感じられますが、流れを理解しておけば円滑に進めることが可能です。
また、寺院墓地の場合には、いわゆる離檀の問題が生じることがあります。これまでの関係性に配慮し、事前に丁寧な相談を行うことがトラブル回避につながります。
「供養したい」という気持ちは変わらない
仏教をはじめとする宗教において、「必ずお墓を持たなければならない」という明確な規定があるわけではありません。現在のお墓のあり方は、日本の文化や慣習の中で長い時間をかけて形づくられてきたものです。
そして、その根底にあるのは、「大切な人を想い、弔い続けたい」という気持ちです。この本質は、どのような供養の形を選んだとしても変わるものではありません。
墓じまいは、その気持ちを手放す行為ではなく、現代の生活に合った形で供養を続けていくための選択肢の一つです。
まとめ:正解は一つではない
墓じまいは、「お墓をなくすこと」ではなく、「これからの供養のあり方を考えること」です。背景には、少子高齢化や都市化といった社会の変化があり、多くの方が同じ悩みを抱えています。
大切なのは、「何が正しいか」を一つに決めることではなく、ご家族の状況や価値観、将来への負担を踏まえたうえで、納得できる選択をすることです。
不安や疑問を感じたときは、一人で抱え込まず、専門家に相談しながら整理していくことで、より良い判断につながります。墓じまいは終わりではなく、新しい供養のかたちへの第一歩といえるのではないでしょうか。
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