相続の落とし穴  

うちは大丈夫と安心していませんか? ここでは見逃しやすい相続の落とし穴について、具体的な例を挙げてご紹介します。

❶「うちには財産は自宅不動産しかないから、相続でもめることはないわ」


遺産の大部分が自宅不動産だと、かえって揉めてしまうかも??

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<遺産>
・自宅不動産(時価3000万円)

・預貯金1000万円 

<相続関係>

被相続人:父(母はすでに他界)
 相続人:長男、次男

父とは長男が長年同居していた。

長男:自宅不動産はそのまま自分が相続して住み続けるから、二男は預貯金1000万円を相続すればよい。

二男:自宅不動産を兄が相続することには納得。しかし法定相続分である1/2(2000万円)を現金で渡してほしい。

長男:え?父の遺した預貯金は1000万円だから、あと1000万円!?・・・そんな現金準備できないよ!!

二男:じゃあ、自宅不動産を売却して、現金で分けよう。

長男:・・・

予防策:父が生前に遺言書を作成していれば・・・


父が生前に「自宅を長男に相続させる。預貯金は二男へ」という内容の遺言を残しておくことで防げた問題です。というのも、今回のように、財産額が偏っている(長男3000万円、二男1000万円)場合は、遺留分に注意しなければなりませんが、今回の場合は、二男の遺留分は、遺産総額4000万円×法定相続分1/2×1/2=1000万円であり、遺言書のとおり預貯金の1000万円で遺留分問題はクリアしています。

では、必ず1000万円は二男に相続させないといけないのか?

いいえ。遺留分は、あくまで「遺留分減殺請求」をされた場合に、発生する問題ですので、二男が請求しなければ、「遺産はすべて長男へ相続させる」という内容の遺言書を遺すことも可能です。
遺言書もただ書くのではなく、遺留分や相続税などいろいろな角度から検討する必要があるのです。

不動産を1人に相続させたいが、他の相続人にもなるべく平等に財産を残してあげたい。だが、遺産のほとんどが自宅不動産が占めている。という場合には、他の相続人へは現金で調整できるようにするため、生命保険(受取人を不動産を相続する者に指定)をご検討すると良いかもしれません。
生命保険は「遺産」とはならず、「受取人固有の財産」ですので、受取人に支払われます。遺留分を請求された際には、生命保険金から支払えるように、準備してあげるのも得策です。
遺言書の作成は、1人1人書くべき内容、注意するべき問題が違いますので、慎重になる必要があります。専門家へのご相談をおススメします。

また、上記のように、不平等な相続内容に二男は不満が収まらないかもしれません。そのようなとき、なぜそのように財産を相続させようと思ったのか、理由や気持ちを伝えてあげると、二男も父の最後の気持ちを理解してくれるかもしれません。このように遺言書に綴る想いを「付言事項」と言います。

付言事項の例
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私は現在、長男○○の家族と同居しています。毎日私の身の回りのお世話をしてくれたり、自分の時間を割いて、私に尽くしてくれています。
その感謝の気持ちをこめて、自宅不動産を長男に渡す事にしました。

二男○○はこの内容に不満があるかもしれないが、どうか私の気持ちを理解して頂き、これからも皆仲良く暮らしてほしいと切に願っています。
今までありがとう。
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❷うちは家族円満、兄弟姉妹は仲良し!!私が死んでも安心だ。

長男長女は「財産はいらない、すべて二男へ。」と言っている。

今はそうでも、実際に相続発生時に同じ思いでいるでしょうか・・・・?

相続発生前に、相続放棄はできません。

お子さまの進学だったり、ご家庭それぞれで物入りになるタイミングはあるものです。そんな時に、財産がもらえるとなれば・・・だれだって欲しくなりませんか?

 

二男:ねえさん、母の財産はすべて僕にあげるって言ってたじゃないか!

長女:状況が変わったのよ!うちだって大変なのよ!!

 

家族の中に亀裂が入らぬよう、準備してあげてください。

予防策:生前に遺言書作成と遺留分放棄

遺言書で二男にすべて相続させる旨記載し、長男・長女が遺留分の放棄をしておけば、当初の予定通り、二男にすべて相続させることができます。
しかし、被相続人が生前の遺留分放棄には裁判所からの許可が必要になります。
また、一度遺留分放棄が認められるとその後の取り消しは原則的にできませんので、しっかり検討したうえで遺留分放棄を行いましょう。

❸うちには子供がいないから、すべて財産は妻へいくだろう。

被相続人に兄弟姉妹がいれば、相続人は妻と兄弟姉妹です(ご両親、祖父母の直系尊属がお亡くなりの場合)。

子がいない夫婦の場合は、相続人の範囲が広くなりますので相続トラブルに発展する可能性が高くなります。

<遺産>
自宅

預貯金

当然のごとく妻が自宅と預貯金すべて相続するつもりだったが、法定相続人である兄弟姉妹が相続権を主張してきたために相続トラブルに発展。夫婦間に子がいない場合には、第二順位の親や祖父母が相続人となり、親や祖父母が他界している場合には、第三順位の兄弟姉妹が相続人となります。 妻側からすると血縁関係がなく疎遠であることが多いため、納得がいかず争いごとに発展してしまうケースです。

予防策:生前の遺言書作成。兄弟姉妹には遺留分はない!

遺言を作成することで子がいない夫婦間の相続トラブルを解決できます。特に被相続人の兄弟姉妹には遺留分がないため、本ケースでも全ての財産を妻に相続させるという内容の遺言があれば全ての財産を妻が相続することが可能となります。

❹どうせ一人だし、死んでも、だれも困らない。「おひとりさま」

一般的に同居する家族がいないことを指す言葉ですが、「おひとりさま相続」となると、民法上決められている法定相続人がいない相続のことを指すこともあります。

「おひとりさま」が遺言をのこしていないケースで、兄弟姉妹や甥姪など法定相続人が一人もいない場合、また、特別縁故者(被相続人と特別の縁故にあった方。被相続人と生計を同じくしていた者や療養看護に努めた者など)もいない場合は、遺産はすべて国庫に帰属することとなり、すべて国の財産となります。

財産の問題のほかに、死後の手続きであったり、認知症になったときのことなど、ご自分の意志で、ご自分の希望で決まられるよう早めの準備が必要なのです。

予防策:生前の準備で安心。

①任意後見契約+見守り契約を利用

「見守り契約」で一人暮らしのお宅を定期的に訪問。生活状況を把握し、万が一に備えます。
「任意後見契約」を結んでおくことで、万が一認知症となった場合は、自分が選んだ信頼できる人に後見人となってもらい、後見制度がスタート。

➁死後事務委任契約

お葬式や、供養、自分が亡くなった後の友人知人への連絡など、あらかじめ自分の希望に沿った形を準備しておきます。

③遺言書作成

財産を承継してほしい人や寄付したい団体などを書いておきましょう。遺言書であれば、個人だけではなく、法人を寄付先と指定することもできます。

これらはすべて、判断能力があるうちに準備することが必要です。自分の希望に沿って今後のことが決められ、万一のための備えがあるという安心感が得られます。これからの人生、安心して過ごすことができるように、ご検討いただきたい内容です。

 

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この記事の執筆・監修

清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所の代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。

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