未成年者・成年被後見人がいると遺産分割はどうなる?

最終更新日:2026年4月9日

手続きが止まる理由と、正しい進め方をわかりやすく解説

未成年者・成年被後見人がいると遺産分割はどうなる?

相続の場面で避けて通れないのが「遺産分割協議」です。ところが、相続人の中に未成年の子どもや成年被後見人の方がいると、「そもそも話し合いに参加できないのでは」と疑問に感じる場面があります。

結論からいうと、そのままでは協議はできません。ただし、法律に沿った方法をとれば、きちんと進めることは可能です。

ここでは「なぜできないのか」と「どうすれば進められるのか」を、未成年者と成年被後見人のケースに分けて整理します。

目次

そもそも、なぜ遺産分割協議ができないのか

遺産分割協議は、単なる話し合いではなく「法律行為」にあたります。
そのため、法律上「単独で有効な意思表示ができない人」は参加することができません。

未成年者や、認知症などで判断能力が十分でない方(成年被後見人)は、この「単独で法律行為ができない人」に該当します。

では、どう対応すればよいのでしょうか。

未成年者が相続人となる場合

未成年者には通常、親権者が法定代理人としてつきます。そのため、原則としては親が代わりに遺産分割協議に参加できます

しかし実務では、ここでよくつまずきます。
それは「親自身も相続人であるケース」が非常に多いからです。

たとえば父が亡くなり、母と子が相続人になるケースでは、母は「自分の取り分」と「子の取り分」の両方に関係する立場になります。

このように、代理する側とされる側の利益がぶつかる状態を「利益相反」といい、この場合、母は子の代理人にはなれません

利益相反になる・ならないの分かれ目

判断のポイントは、「親も同じ相続に関わるかどうか」です。

①利益相反にならない例

祖母が亡くなり、祖母の子である父が先に亡くなっていて、子が代襲相続となる場合、母は子の代理人として遺産分割協議に参加することができるのでしょうか??

この場合は、母は祖母の相続人ではないので、子の代理人となり父の兄弟姉妹たちと遺産分割協議に参加することができます。

②利益相反になる例

未成年の子の父が亡くなった場合、母は子の代理人として遺産分割協議に参加することができるのでしょうか??

この場合には、母と子どもは同じ相続人としての地位にいるため、「利益相反」となります。そのため、母は子の代理人となることはできません。

「利益相反」が生じている場合は「特別代理人」の選任が必要

利益相反がある場合は、家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てます。

特別代理人は、未成年者の利益だけを守るために、その相続に限って代理を行う人です。特別な資格は不要で、利害関係のない親族が選ばれることが多いですが、専門家が選任されることもあります。

なお、子どもが複数いる場合は、それぞれに特別代理人が必要になる点にも注意が必要です。

特別代理人を立てれば自由に分けられるわけではありません。
家庭裁判所に提出する「遺産分割協議書」は、原則として未成年者の法定相続分を確保した内容である必要があります。
法定相続分についてはこちら

もっとも、不動産しかないなど現実的な事情がある場合には、理由を丁寧に説明することで例外的に認められることもあります。

ただし、一度申立てた内容は原則変更できないため、ここは非常に重要な判断ポイントになります。

特別代理人選任申立ての流れ

  • 1

    戸籍等提出書類の収集

  • 2

    遺産分割協議書案の作成

  • 3

    申立書類の準備・作成

  • 4

    家庭裁判所へ申し立て

  • 5

    家庭裁判所から届く照会書への回答・返送

  • 6

    審判

  • 7

    審判確定・選任審判書到着

特別代理人選任申し立てをするための費用の目安

●実費
子1人ごとに・・・
・収入印紙 800円
・切手代 おおむね2,000円前後
・戸籍等の必要書類の取得費用  数千円
※管轄の家庭裁判所への要確認

●清澤司法書士事務所の申立書作成報酬
 8万円~
※通常、相続登記(¥98,000~)と同時のご依頼となるため詳しくはお問い合わせください。

成年被後見人が相続人となる場合

認知症などで判断能力がない場合、そのままでは遺産分割協議に参加できません。

すでに成年後見人がついていれば、その後見人が代理して協議に参加します。ついていない場合は、家庭裁判所に後見開始の申立てを行う必要があります。

成年後見人の選任申し立ても清澤司法書士事務所にお任せください。

成年後見人がいる場合の重要なルール

成年後見人は、家庭裁判所の許可なしに遺産分割協議へ参加できます。

ただし、非常に重要なのが「本人の利益の最大化」という原則です。
実務上は、本人の法定相続分を確保する内容でなければ認められないと考えておくのが安全です。

「生活に困っていないから少なくてもよい」といった事情は、基本的には考慮されません。後見人が本人に不利な内容の協議に同意してしまうと、善管注意義務違反として後見人の責任が問われる可能性があります。

後見人にも利益相反がある場合

もし後見人自身も相続人であれば、やはり利益相反となります。この場合は特別代理人を選任する必要があります。

ただし、後見監督人がすでにいる場合は、その監督人が協議に参加するため、特別代理人は不要となります。

成年後見制度を使う前に知っておくべきこと

成年後見は「相続のためだけに一時的に使う制度」ではありません。
一度開始すると、原則として本人が亡くなるまで続き、途中でやめることはできません。

2024年4月の制度改正により、成年後見制度では「本人の意思の尊重」がより重視されるようになりました。後見人は財産管理だけでなく、本人の生活や希望を考慮した判断を行うことが求められています。

親族が後見人になる場合は、毎年の報告義務が発生します。専門家が後見人になると、毎月数万円の報酬が継続的にかかります。

この点は制度上の大きな特徴であり、申立て前に必ず理解しておく必要があります。
※近年は「任意後見契約」や「家族信託」など、将来に備える制度の活用も増えていますが、すでに判断能力が低下している場合には利用できないため注意が必要です。

成年後見人選任申立ての流れ

  • 1

    医師の診断書などの手配

  • 2

    申立類型の選択(後見・保佐・補助)

  • 3

    申立書類の準備・作成

  • 4

    家庭裁判所へ申し立て

  • 5

    審理・審判

  • 6

    審判確定・後見登記

利用するための費用の目安

●実費
・収入印紙 3,400円
・切手代 3,000~5,000円
・戸籍や診断書等の必要書類の取得費用  数千円
・鑑定費用(必要がある場合のみ)5万~10万円
※家庭裁判所への確認必要

●清澤司法書士事務所の申立書作成報酬
 10万円~
※弁護士に申立書の作成を依頼した場合の相場・・・20万~40万円以上

まとめ:未成年者や認知症の方がいる場合の遺産分割協議は慎重に

未成年者や認知症の方が相続人にいる場合、遺産分割協議はそのままでは進められませんが、正しい手続きを踏めば進めることができます。

本人の権利を守るために、代理人の選び方と協議内容に厳格なルールがあるという点です。
特に以下の3点は、自己判断で進めるとリスクが高くなります。

  • 利益相反の有無の判断
  • 協議内容の妥当性
  • 成年後見制度の継続的な負担

相続人の中に未成年者や認知症の方がいる場合の手続きは、通常の相続より複雑で、間違えると後から協議が無効になるリスクもあります。清澤司法書士事務所では、特別代理人選任申立て・成年後見人選任申立てのサポートを行っています。お気軽にご相談ください。

この記事の執筆・監修

清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所の代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。

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