空き家の放置に注意!相続放棄後の管理義務と対処法を解説

最終更新日:2025年11月20日

相続したけれど使う予定がない」「売るにも手間がかかる」―そんな理由で空き家を放置している方が増えています。

相続が発生すると、相続人は預貯金や株式、不動産などの財産を引き継ぐことになります。 しかし、被相続人(亡くなった方)に借金があったり、空き家の管理が負担になる場合などは、相続放棄を選ぶケースもあります。

ところが、相続放棄をしても、配偶者や子供などに空き家などの財産の管理義務が残ることがあるのをご存じでしょうか?特に2023年の民法改正以降、管理責任の範囲や条件が明確化され、誤解による放置が損害賠償などのトラブルにつながる可能性もあります。

この記事では、相続放棄後にも責任が残るケースと、その対処法についてわかりやすく解説します。

目次

相続放棄をしても管理義務が残るケース

相続放棄をしても、家などの管理義務が残るケースは民法940条に示されており、条文には「放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有するときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の精算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない」と記載されています。

たとえば、親と同居していた子が相続放棄をした場合でも、その家に住み続けていたり、荷物を置いたままにしていたりすると、「現に占有している」とみなされ、管理義務が発生する可能性があります。このような場合、屋根の劣化などをそのまま放置したことにより通行人等の第三者に被害が及んだ場合、損害賠償を請求される可能性がありますので、注意が必要です。

一方で、2023年の民法改正により、相続財産を占有していない相続人には管理義務が生じないことが明確化されました。東京など遠方に住んでいて空き家に一切関与していない相続人が、田舎に暮らす被相続人の死亡を知っていた場合で、生前に作成された遺言書で財産を取得することが指定されていたとしても、相続放棄をすれば現に占有している状態ではなければ保存義務は生じません。制度が変わったことにより、管理義務を免れるケースも多いでしょう。

ただし、相続放棄後に空き家を売却したり、処分行為を行った場合は「単純承認」とみなされ、相続放棄が無効になる可能性もあります。放棄後の行動には十分注意が必要です。

空き家の管理義務を免れるための方法

相続放棄をしても、空き家を「現に占有している」場合には管理義務が残る可能性があります。では、どうすればその責任から解放されるのでしょうか。ここでは、現実的に取り得る2つの対処法をご紹介します。

他の相続人に相続してもらう

相続放棄を検討する理由の多くは、「管理ができない」「固定資産税の負担が重い」といった現実的な事情です。このような場合、他の相続人に不動産を相続してもらい、管理や活用を引き継いでもらうことで、自身の管理義務を回避できます。

子どもが相続放棄をした場合は兄弟姉妹など民法で定められた後順位の人に相続権が移ります。兄弟姉妹や親族の中にその不動産を活用できる人がいれば、相続登記を行うことで所有権が移り、管理責任もその人に引き継がれます。

ただし、相続人がいない場合や、関係が疎遠・不仲で協力が得られない場合は、この方法が取れないこともあります。また、相続権が後順位の親族に移る場合でも、事前に意思確認をしておくことがトラブル回避の鍵となります。

相続財産精算人の申立を行う

他の相続人がいない、または誰も財産を引き継がない場合は、家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申し立てるという方法があります。これは、相続財産を管理・処分する専門の第三者を選任してもらう制度で、申し立て後は管理義務を免れることができます。

相続財産清算人は、被相続人の借金や債務を整理し、残った財産を売却または国庫に帰属させる役割を担います。不動産についても、売却が難しい場合は国に引き取ってもらう手続きが取られます。

申立てには、戸籍謄本相続関係説明図などの書類を家庭裁判所に提出し、選任決定を受ける必要があります。制度を利用して財産を引き渡した後は、占有者としての管理責任を問われることはありません。

相続に関するお悩みは専門家に相談を

相続放棄後でも状況に応じた対処法を選ぶことで、空き家の管理責任から解放される道はあります。「自分に合った方法がわからない」「どちらの手続きが適しているか判断できない」と感じたら、早めに専門家に相談することをおすすめします。誤った選択をして、不動産を放置した結果として損害賠償を請求されたり、相続税の計算を誤ってしまったりというリスクは減らすことができます。

では、まずどこに相談するのが良いのかとお悩みの際は、清澤司法書士事務所にご相談ください。相続税に強い税理士、弁護士とも連携しておりますので窓口一つで手続きもスムーズです。多岐にわたる相続のお悩みも、やるべきことをわかり易くご案内いたします。

相続放棄までの期限は被相続人の死亡の翌日から3カ月以内、相続税の申告と納付は10ヶ月以内と期間も短く、すぐに相続した土地や建物を相続するかどうか考える必要があり、時間がありません。そのため、関連する分野で業務として実績がある専門家に早めに相談し、検討することで安心して財産承継の手続きを進めることができます。

実際に依頼する際は、税金の計算に関連する、相続発生時点の預貯金や株式、不動産、金など遺産や負債の資料を見せて見積もりをもらい、報酬を明確にしてもらってから依頼するようにしましょう。まずは、気軽に電話やメールで相談が可能か確認してみるとよいでしょう。

この記事の執筆・監修

清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所/中野リーガルホームの代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。

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