最終更新日:2026年4月9日
遺産分割の方法は?無効を防ぐための正しい選択
相続の手続きを進める中で、精神疾患や認知症などにより判断能力が十分でないご家族がいる場合、このまま話し合いを進めてよいものか判断に悩むところです。
結論として、その方を除いて遺産分割を決めることはできず、仮に進めてしまっても後から無効と判断される可能性があります。
では、どのように進めればよいのでしょうか。ここでは、実務でよく検討される二つの方法を中心に、制度のポイントと注意点を整理します。
目次
「本人の意思」がないと遺産分割は成立しない?
遺産分割協議は単なる話し合いではなく、法律行為にあたります。
そのため、相続人全員が内容を理解し、自分の意思で同意していることが前提になります。
判断能力が不十分な状態で作成された遺産分割協議書は、有効と認められない可能性が高く、たとえ署名や押印があっても「内容を理解できていなかった」と判断されれば無効となるおそれがあります。
このリスクを避けるためには、「本人の意思を適切に補う仕組みを利用する」「そもそも協議を行わない方法を選ぶ」いずれかの対応が必要になります。
方法①:成年後見制度を利用する
最も確実な方法は、家庭裁判所に申立てを行い、成年後見人を選任してもらうことです。
成年後見人は本人に代わって遺産分割協議に参加し、財産管理や契約行為を行います。役割の中心は「本人の利益を守ること」であり、実務では本人の法定相続分を確保する内容が基本となります。
手続きを検討する際の現実的なポイント
まず、選任までに一定の時間がかかります。申立てから選任まで通常1〜2か月程度、場合によってはそれ以上かかることもあります。相続税の申告期限(10か月)との関係では、早めの判断が重要です。
また、後見人は必ずしも家族が選ばれるとは限りません。家庭裁判所の判断により、弁護士や司法書士などの専門職が選任されるケースも多く、その場合は本人の財産から継続的な報酬が発生します。
さらに、成年後見制度は一時的な制度ではありません。一度開始すると、原則として本人が亡くなるまで続きます。遺産分割が終わっても終了しないため、その後の財産管理が継続する点も踏まえて検討する必要があります。
※2024年以降、成年後見制度では「本人の意思の尊重」がこれまで以上に重視されています。財産を守るだけでなく、本人の生活や希望を踏まえた支援を行う方向へ運用が強化されています。
方法②:法定相続分で分けるという選択
もう一つの方法として、遺産分割協議を行わず、法律で定められた割合(法定相続分)のとおりに分ける方法があります。
この場合、新たな合意形成を必要としないため、成年後見人を選任せずに手続きを進められる可能性があります。
ただし、この方法には注意点があります。
法定相続分で分ける場合の落とし穴
一見シンプルに見えますが、不動産が含まれる場合は特に慎重な判断が必要です。
不動産を法定相続分で分けると、複数人で共有する状態になります。共有不動産は売却や活用のたびに全員の同意が必要となり、実務上の自由度が大きく制限されます。
さらに、共有者の一人に相続が発生すると権利関係が次世代へ引き継がれ、関係者が増えていきます。結果として「誰も動かせない不動産」になるリスクもあります。
税務面でも注意が必要です。
たとえば自宅の相続で利用されることが多い「小規模宅地等の特例」は、一定の要件を満たす人が取得することが前提です。形式的に分けてしまうことで特例が使えず、結果的に税負担が増えるケースもあります。
どちらを選ぶべきかは「状況次第」
成年後見制度を利用するか、法定相続分で進めるか。
この判断に絶対的な正解はなく、家族構成や財産内容によって最適な選択は変わります。
不動産の割合が大きい場合や、将来的に売却・活用を考えている場合は、後見制度を利用してでも整理しておいた方が結果的に負担が少ないことがあります。
一方で、現金中心でシンプルに分けられる場合は、あえて複雑な手続きを取らないという判断もあり得ます。
まとめ:本人の権利と家族の将来を守るために
判断能力が不十分な相続人がいる場合、遺産分割は通常どおりには進められません。
しかし、制度を正しく理解すれば、無理なく進める道筋は見えてきます。
大切なのは、本人の権利を守ることと、将来のトラブルを防ぐことを同時に考える視点 です。
制度の選択を誤ると、後からやり直しができなかったり、長期的な負担が残ったりする可能性があります。迷った段階で専門家に相談することが、結果的に最も効率的で確実な進め方といえます。
清澤司法書士事務所では、ご家族それぞれの状況に寄り添い、最適な解決策を一緒に考えさせていただきます。初回相談は無料で承っておりますので、お電話・メール・LINEなどでお気軽にお問い合わせください。















