相続人が遺産分割の書類に印鑑を教えてくれない場合の対処法とは?

相続が発生すると法定相続人は遺産の分割について全員で話し合い、遺産分割協議書を作成し、全員が合意のうえ署名・押印する必要があります。しかし、相続人の中に一人でも手続きに協力してもらえない人がいると金融機関の名義変更や不動産の登記をすることができません。そのため、相続人の人数が多い場合や疎遠な遠い親戚がいる場合は注意が必要です。

手続きの協力してくれない相続人がいる場合、どのように対応したらよいのでしょうか。当記事では対処法や注意点についてポイントをおさえて解説します。

目次

相続手続きの流れ

そもそも、相続手続きはどのような流れで進んでいくのでしょうか。相続手続きの流れと相続人の協力が必要なタイミングについて解説します。

最初に相続人全員の協力が必要なタイミングは遺産分割協議です。遺産分割協議をする時です。遺産分割協議ではすべての財産を調査し、誰が何を相続するか決めることになります。遺産分割協議書には署名・押印が必要です。遺産分割協議の際はすべての財産を調査したうえで行う必要があります。後から財産が見つかると何度も相続人で協議を行う必要が生じますので、しっかりと調査しておくようにしましょう。

次に必要なのは、不動産の登記や銀行や証券会社の口座に預けている預金や株式等の名義変更です。不動産の登記は法務局に書類を提出する必要があり、遺産分割協議書に押す実印は登録している実印であることを証明するために印鑑証明書もあわせて提出する必要があります。金融機関の手続きも金融機関によって異なりますが、全員の署名が必要な場合があります。

手続きについて自分で行うことが難しい場合は司法書士などの専門家に依頼することも可能です。

相続人が協力してくれない場合の対処方法

印鑑証明書の入手など一部費用がかかることもあり、無料ですべての手続きをすることができないため、家族が相続手続きに協力してくれない事例があります。名義変更など各種手続きの際に印鑑を押してもらえないなどに協力してもらえない場合どのように対処すればよいのでしょうか。対応方法と注意点について解説します。

相続人と話しあう

協力してくれない相続人がいる場合、まずは連絡をこまめにとりしっかりと時間をとってもらい、話し合いをすることが大事です。手続きに協力してくれない原因や状況はさまざまですので無理に進めようとすると逆に態度を硬化してしまう可能性があります。分割の内容や親が行った生前贈与などにより特別受益があり不公平があり納得がいっていないケースや、介護をしており、寄与分があり自分が多くもらうべきだと思っているケース、平日は仕事で忙しくて対応できないなどの理由が考えられます。

対応してくれない理由を聞くなど話し合いをする姿勢を見せないとかえって関係が悪化し、揉める可能性があります。不動産の登記も義務化されており、手続きが必要な事実を丁寧に説明し、スムーズに進めることを目指すことが重要です。

弁護士に相談する

被相続人が亡くなってから、書類の作成などを依頼しても全く応じてくれない場合や、配分についてのそれぞれの主張が平行線となり、兄弟などの当事者同士で調整し、遺産分割協議を成立させることが難しい事態となった場合は弁護士に相談し、交渉を依頼するようにしましょう。弁護士にも専門分野がありますので、相続関連の問題を多く取り扱い、解決している法律事務所に相談することをおすすめします。

配分については不動産を共有にするなど法定相続割合で分割する方法もありますが、共有にしておくと後々売却や活用する際にトラブルになる可能性もあります。弁護士を交えての交渉でも合意できなかった場合、家庭裁判所での調停を申し立てることになり、調停でも解決できない場合は審判へと進みます。

生前に遺言を作成しておく

遺産相続の際に協力してくれない可能性がある相続人がいる時はできれば事前に遺言書を作成しておき、配分を明確にしておくことをおすすめします。ただし、配偶者や子、父、母は法定相続分だけでなく遺留分がありますので、相続放棄をしない限り遺留分侵害となり配分をゼロにすることはできません。配分についても慎重に検討し、決めておくようにしましょう。

遺言書を作成する時は手続きを行う執行者を定めておくことが重要です。執行者とは遺言書通りに遺産分割の手続きをする人のことで、相続人中から指名することもできますし、司法書士や行政書士、税理士などに依頼することも可能です。

執行者を指定しておくことで遺言書に基づいて不動産の登記や名義変更をすることができますので、相続人にかかる負担を大きく軽減することができます。遺言書を作成する際は専門家と一緒に配分のシミュレーションを行いながら作成するとよいでしょう。

相続税の申告について

相続手続きに協力してくれない人がいる場合、税金の申告期限が心配になる人もいるでしょう。被相続人の相続財産が基礎控除を超えている場合、財産を取得する者は被相続人の死亡の翌日から10ヶ月以内に申告を完了させる法的な義務があることが法律で定められています。相続の開始から10ヶ月以上経過すると、加算税や延滞税など他の税金も課されることになり、額も大きくなります。短い間に手続きが必要となり、慣れていない人には簡単ではありませんので注意しましょう。

相続税の計算をするために財産の評価を行い、一覧を作成をします。特例を利用する場合は添付の資料を準備する必要があります。

相続税の申告までに遺産分割協議が完了することが困難な場合、いったん民法の法定相続割合で分割したものとして相続税の申告を行います。その後、遺産分割協議が完了した際に修正申告を行う必要があります。未分割で申告した場合、配偶者が相続する場合の配偶者控除や自宅の土地を相続する場合の小規模宅地の特例を活用することができませんが、修正申告の際に更正の請求を行うことで、特例を適用することが可能となります。

相続税の計算方法については国税庁のホームページに記載がありますが、自分で計算することが難しい場合は税理士にサポートを依頼するようにしましょう。

相続のお悩みは専門家に相談を

相続に関するお悩みはさまざまなものがあり、内容によって弁護士、司法書士、税理士などに相談する必要があります。自分で何から始めていいかわからず、困っている場合はまずは司法書士に相談をするとよいでしょう。経験豊富な専門家に依頼することで、費用はかかりますが、困っていることを的確に解決できるメリットは大きいです。

相続の経験が豊富な司法書士に依頼することで適切な専門家を紹介してもらうことも可能です。初回の相談はサービスで無料で応じてくれるケースも多いのでまずは気軽に電話やメールで相談に行くとよいでしょう。

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