被相続人が非上場株式を保有している場合、誰が相続するか決める必要があります。
また、相続人はすべての相続財産の配分について誰が何を相続するか決める必要がありますが、相続放棄は相続人不存在などで誰も相続する人がいない場合、非上場株式を発行している会社はどのように対応をすればよいのでしょうか。
当記事では非上場株式を保有している人が亡くなった場合の対処方法について紹介します。
目次
- 非上場株式を保有する人が亡くなった時の注意点
- 評価が複雑
- 配分をよく検討する必要がある
- 相続の手続きが完了するまで議決権の問題が発生する
- 相続する人がいないケース
- 相続人全員が相続放棄をしたケース
- 相続人がいない
- 定款を変更する
- 遺言書を作成する
- 非上場株式を保有している場合は専門家に相談を
非上場株式を保有する人が亡くなった時の注意点
非上場株式を保有する人が亡くなった時にはどのような点に注意をすればよいのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。
評価が複雑
被相続人の財産の総額が基礎控除を超える場合、相続開始から原則10ヶ月以内に各財産の評価と相続税の申告が必要となります。
非上場株式の評価は取引相場のある上場株式に比べると非常に複雑です。会社の規模によって評価方法が異なりますし、純資産や配当金額などさまざまな要素を組み合わせて計算を行うことになります。相続税の課税を行うための計算は慣れていない人が行うことは難しいため、税理士に相談するようにしましょう。
配分をよく検討する必要がある
非上場株式は譲渡制限がついていることが一般的で上場株式のように簡単に第三者に売却して手放すことはできません。また、遺産として相続することになりますので相続した後に処分をするとしても相続税を支払う必要があります。そのため、財産的な価値があっても会社を承継する人でなければ引き継ぎたくないと考える人も多いでしょう。
配分については相続人全員で話し合いを行って合意したうえで、相続手続きを行う必要がありますが、相続人同士でトラブルとなり、どうしても配分について合意できない状況となった場合は弁護士を交えての話し合いを行うことになります。それでも解決できない場合は家庭裁判所での調停や審判に進みます。
相続の手続きが完了するまで議決権の問題が発生する
非上場株式の保有者が亡くなった場合、相続手続きが完了するまで、議決権の問題が発生することがあります。相続が発生し、誰が相続するか確定していない場合は遺産分割協議が完了するまで相続人全員で準共有という状態となります。準共有のまま長期間継続すると会社経営における経営判断が出来なくなり、問題が生じます。特に多くの株式を保有する代表取締役が亡くなった場合、後任を決める株主総会を開催することが出来ないケースもあります。
誰が相続するか確定した場合は株式発行会社または株式名簿管理人を置いている場合は管理人に連絡を名義変更の手続きを行うことになります。会社経営に支障がないように取得する者が決まった場合、迅速に手続きを進めるようにしましょう。
相続する人がいないケース
非上場株式を相続する人がいなく、会社側が困るケースがあります。相続する人がいないケースとはどのようなケースがあるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。
相続人全員が相続放棄をしたケース
相続人は相続により被相続人が保有していた財産を取得する権利と借金などの債務を支払う義務を引き継ぎます。しかし、被相続人の債務が多く、プラスの財産を引き継げない場合や事業承継をする負担が大きいと考えた場合、相続人全員が放棄をする可能性があります。
相続放棄は相続発生後3カ月以内に家庭裁判所に申し立てを行い認められる必要がありますが、全員で放棄をすると自社株式を相続する人がいなくなってしまいます。
相続人がいない
非上場株式を保有している人に子供や兄弟姉妹や甥・姪などの法定相続人が一人もおらず、相続する人がいないケースがあります。
相続人がいない場合は相続人を捜索し、相続財産清算人を選任し、相続人不存在が確定した後に特別縁故者を探すことになり現れた場合は財産分与を行います。特別縁故者もいなかった場合は財産は国庫に帰属します。相続人を探す必要があるなどの理由で相続人不存在の確定には時間がかかるので、株式を発行している会社は早めに対応することが必要です。
非上場株式を保有している場合は生前の対策が重要
非上場株式を保有している場合、相続発生前に対策を行うことが重要です。どのような対策が有効となるか確認しておきましょう。
定款を変更する
相続が発生し問題が発生する前に定款を変更してルール整備をして将来の相続に対応することが可能です。相続で有効となる変更のひとつとして会社側に相続で取得した者に対し売渡を請求することができる旨を定めておくという方法があります。定款を定めておくことにより誰が相続するかわからない場合も自社株式を譲渡してもらい、会社で買い取ることが可能となります。
他にも議決権が制限された種類株式を発行しておくという方法があります。議決権が制限された種類株式を発行しておくことで、経営に参加しない相続人に経済的な価値のみ相続させることができます。
定款の変更については弁護士や司法書士など法律の専門家に相談するようにしましょう。
遺言書を作成する
非上場株式の分割協議には時間がかかることも多いため、遺言書を作成し分割方法をあらかじめ決めておく方がよいでしょう。遺言書を作成する際は預貯金や株式、不動産など財産の一覧を作成し、相続税の計算も行ってそれぞれがどれくらいの額を納税することになるかもふまえて検討するようにしましょう。
財産を配分する際に非上場株式や事業に使っている土地などを後継者一人に相続させると、他の相続人が遺留分侵害の状態となる場合があります。遺留分は配偶者や子などに認められた最低限財産を相続する権利です。遺留分を侵害する遺言書を作成しても相続が発生した後に遺留分を相続人が主張した場合は遺言書通りに配分できない可能性があります。非上場株式を相続する際に、税金の負担が大きく配分がうまくいかないことも多くあります。相続人の負担を軽減するために生前贈与などの節税策もあわせて検討しておくようにしましょう。
また、遺言書には執行者を指定することが重要です。執行者を指定することで遺言書を法的根拠に非上場株式や金融機関の名義変更や不動産の登記をスムーズに行うことができます。
遺言には自筆証書遺言と公正証書遺言がありますが、作成時に法的に有効なことが確定できるため、公正証書遺言を作成しておいたほうが安心です。遺言の内容や書き方についても司法書士などの専門家に相談するとよいでしょう。
非上場株式を保有している場合は専門家に相談を
非上場株式を保有している人が死亡した場合の相続手続きや相続税の計算は通常の相続とは違い注意するべき点が多いです。そのため、一般の人が手続きを行うことは簡単ではありません。自分で手続きを行うことが難しい場合は専門家に相談するようにしましょう。
相続関連の手続きの実績がある、法律事務所や税理士事務所に相談し、弁護士、司法書士、税理士など専門家のサポートを受けることで、スムーズに手続きを進めることができます。正式に依頼する前に報酬についても確認し、期限内に手続きをするために早めに依頼するようにしましょう。