特別受益の持ち戻し免除とは?遺留分にも関係する?

遺産を分割する際にはさまざまなことを考慮して行う必要があります。考慮すべき事項の一つとして、生前贈与などの特別受益があげられます。

被相続人から生前に贈与を受けている場合、事前に財産を受け取っていることになります。しかし、被相続人が事前に贈与をした特別受益は関係なく財産を分けてほしいといわゆる持ち戻し免除の意思表示をしている場合、遺産分割や遺留分にどのように影響をするのでしょうか。

当記事では、特別受益や持ち戻し免除の意思表示がされているケースの遺産分割について具体例を交えながらポイントを解説します。

目次

特別受益とは

特別受益とは生前に多額の贈与を受けているケースで、特定の相続人が得ている財産的なメリットのことを指します。

例えば、子どもが二人おり、誰か一人が居住不動産を購入する際の贈与の特例を使い、1,000万円の贈与を受けており、もう一人の子供が贈与を受けていない場合、被相続人が亡くなった時の相続財産を二人で均等に分けると先に贈与を受けた方が結果的に多くの財産を受け取る形となり有利になります。他にも事業承継のために多額の財産や事業用の土地や建物を一人の人間に既に親から亡くなる前に引き継いでいるケースや、婚姻期間20年以上の夫婦が利用できる、自宅不動産の贈与の特例を利用した場合でも配偶者が多く利益を得ていることになり相続財産についての問題が発生します。

相続が発生する前に贈与を受けた財産については相続が発生した後に贈与した分を差し引いて計算をしたうえで遺産を法定相続分通りに分割するということも考えられます。法定相続人が公平に財産を分けられるこのような考え方を特別受益の持ち戻しといい、民法903条1項で定められています。

一方で、贈与をした分は考えずに財産を分けて欲しいと意思表示がされるケースも十分に考えられます。このようなケースでは特別受益の持ち戻し免除の意思表示をすることで、特別受益を受けている相続人はその分を請求されることはなくなります。

持ち戻し免除の意思表示の方法は決められていませんので口頭の意思表示が認められないわけではありませんが、トラブルになる例もあります。そのため、遺言書など書面に記載しておくのが一般的な方法です。

なお、持ち戻し免除の意思表示はその時点で行うことができ、いつでも撤回することが可能です。

特別受益によって遺留分を侵害しているケース

特別受益によって遺留分を侵害しているケースでは遺言により持ち戻しの意思表示があったとしても、民法で遺留分を侵害された者は特別受益を得ている者に対し、遺留分侵害額請求し、権利を主張し資金を得ることが可能です。遺留分を侵害している遺言はかえってトラブルになるケースも多く、家庭裁判所での調停や審判に進むケースも多いので注意が必要です。

遺留分はそもそも、被相続人の意思表示があったとしても、配偶者や子などの相続人が最低限もらえる権利を保護するため被相続人の意思よりも遺留分の権利が尊重されます。ただし、相続が発生した際に遺留分を侵害された者が相続放棄をするなど、財産を受け取らないと判断した場合は必ずしも受け取る必要はありません。

特別受益の持ち戻しの意思表示がない場合

被相続人が生前に具体的な配分を示した遺言書を作成しておらず、特別受益の持ち戻しの意思表示をされていないことも多いでしょう。このようなケースでは特別受益を持ち戻すことを前提に相続人同士で話し合いをすることになります。しかし、贈与された対象によっては持ち戻しに馴染まないものもあり、被相続人が亡くなってから問題になるケースも多いです。

持ち戻しの有無は贈与された額や内容も含めて考慮する必要がありますが、相続人が納得できるように、できれば遺言を作成し、事前に意思を明確にしておいた方がよいでしょう。

また、特別受益の持ち戻しは基本的に法定相続人にのみ考えられるものですので、孫などに遺贈した場合は対象外となります。長男の子が3人で長女の子が1人など孫の数に差があるケースでは、孫1人あたりで同じ金額を贈与していても世帯単位では不公平となり、争いになる可能性がありますので、この点も意思を明確にし、遺言書に記載しておくことをおすすめします。

相続に関するお悩みは専門家に相談を

相続が発生するとまずは各財産の評価額をまとめた一覧を作成し、法定相続人全員で遺産分割について協議することが必要となります。しかし、相続に関するお悩みは上記で解説した配分だけでなく、相続の申告や不動産の登記や金融機関の名義変更などさまざまなものがあるでしょう。相続に関するお悩みがある時は弁護士、税理士、司法書士など専門家に相談し、手続きを進めるようにしましょう。

特に相続税の申告が必要な場合は、相続開始から原則10ヶ月以内と期間が短く、慣れない人にとっては簡単ではありません。費用はかかりますが、自分で難しい場合は専門家のサポートを受けて解決することをおすすめします。初回の相談は無料で応じてくれるケースが多いので、電話やメール等でまずは気軽に相談してみるとよいでしょう。

 

 

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