親の借金は放棄できる?

相続が発生すると遺された配偶者や子どもなどの家族で法定相続割合を基準に話し合って、遺産を分割することになります。しかし、親などが亡くなった際に多額の借金があり、借金を引き継ぎたくないと考える人も多いでしょう。

当記事では親が借金を抱えたまま亡くなった場合の対処方法について解説します。

目次

相続ではプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐ

大前提として理解しておくべきことは、法律で定められている法定相続人は通常、被相続人が生前に保有していたプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことになるということです。

プラスの財産とはそれぞれ預金や株式などの金融資産、土地・建物などの不動産、金や貴金属、美術品などの現物資産です。マイナスの財産とは借金や債務等です。相続人は借金を引き継いだなら、自分の責任の範囲において負債の返済を続ける義務があります。

マイナスの財産が多い場合の対処方法

マイナスの財産が多い場合、相続人としてはどのような対処方法が考えられるのでしょうか。具体的に手続をする際に知っておくべき大切なことや注意点を確認しておきましょう。

相続放棄をする

相続放棄とはすべての財産を相続することを放棄することです。相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄することになり、相続放棄をした人は初めから相続人ではなかったのと同じ状態になりますので、相続財産の遺産分割にも参加しません。

被相続人が多額の借金をしている状況であったとしても、債権者から返済の請求をされることはありません。ただし、相続放棄をするとすべての遺産を引き継ぐ権利を失いますので、自宅不動産のみ引き継ぐとか、預貯金のみ引き継ぐということはできないというデメリットがあります。そのため、相続放棄の意思表示をする前に財産を一覧にして相続放棄をするべきかどうか慎重に検討するようにしましょう。また、財産の一部でも処分行為をすると相続放棄をしたものとみなされて相続放棄をすることができませんので十分に注意が必要です。

ただし、相続放棄をしても相続人固有の財産である生命保険の死亡保険金のみは受け取ることが可能です。

相続放棄は相続人一人で単独で家庭裁判所に申述し行うことが可能です。事前に遺言書が作成されており、財産を遺すことが記載されていた場合や遺留分がある場合でも自分の意思で放棄をすることが可能です。

熟慮するための時間として相続放棄を家庭裁判所に受付してもらえる期限は3ヶ月以内と決まっていますので、期限には注意が必要です。どうしても期限に間に合わない事情がある場合は延長の申請を認めてもらうことで、3ヶ月経過後でも受理してもらうことが可能です。

また、相続放棄をすることで、兄弟姉妹など、民法で定められている自分以外の次の順位の親族に相続権が移ることがあります。相続放棄の制度を活用する時は、関連する親族にも連絡をしたうえで手続きをするようにしましょう。

限定承認をする

限定承認とは被相続人のプラスの財産の範囲でマイナスの財産の責任を負う制度です。限定承認であれば、取得した財産以上の借金を負うことはありませんので、取得した不動産などを売却して返済に充てることは可能です。被相続人の財産と債務がどれくらいありかわからず、調査しきれない場合にメリットのある方法です。相続した評価額に応じて借金も引き継ぐことになりますので、田舎の評価額が低い土地であれば、引き継ぐ債務も小さくなりますが、東京や大阪などアクセスの良い土地であれば、引き継ぐ借金も多額になります。

限定承認は原則3ヶ月と短い間で手続き必要となるのに加え、相続人全員で共同して家庭裁判所に申請する必要があります。そのため、自分が限定承認をしたいと思っていても、誰か一人でも別の相続人が了承しないと利用することができないなど相続人間の考えの違いが問題となる可能性もあります。

短い期間で相続人全員で意見をあわせて申請を行う必要があります。相続人間でトラブルになり関係が悪化した事例では弁護士を交えて話し合いが必要になる場合もあり、解決するまで手続きを進めることができないので、相続開始後すぐに他の相続人との話し合いや書類の準備などの対応の方針を検討する必要があります。

相続に関するお悩みは専門家に相談を

相続は人生で何度も経験することではありませんので、簡単なことではありません。知識や経験がなく相続税の制度や必要な手続きの方法や書類の書き方が分からないという方は多いでしょう。

手続きが難しいなら自分一人で悩まずに専門家に相談することをおすすめします。税理士や司法書士などの専門家に不動産の登記や銀行や証券会社など金融機関の名義変更などの手続きの代行を依頼することができます。業務として行っている専門家にサポートを依頼することで費用はかかりますが、スムーズに安心して手続きを進めることができます。

特に相続税の申告が必要な場合は、財産を取得した者が被相続人が亡くなってから10ヶ月以内に申告書の作成と納付を完了させる必要があります。相続税の計算は複雑で財産の調査や相続人同士で協議を行っているとあっという間に時間が過ぎてしまいますので、手続きが間に合わないケースも多くあります。基礎控除以下の場合は、税金の支払いや申告は必要ありませんので、まずは相続税の申告が必要かどうか確認しましょう。

初回の相談は無料で対応している事務所も多くありますが、手続きの内容や費用について先に確認してから正式に依頼することをおすすめします。まずは電話やメール等でお気軽に相談してみるとよいでしょう。

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