親族が亡くなり相続が開始すると、相続人は法定相続分を基準に遺産分割の話し合いを行い、合意のうえで相続財産を配分することになります。
しかし、民法で定められた法定相続人の中に反社会的勢力の人がいる場合、どのように対処すれば良いのでしょうか。
当記事では反社会的勢力の人が相続人の中にいるケースの対象法について解説します。
目次
相続人が反社会的勢力の人がいる場合の問題点
相続人の中に反社会的勢力の人がいる場合、交渉が困難なケースも多くあります。無理難題を押し付けられたり、自分や家族へ危害を加えることをほのめかして脅すこともあるかもしれません。このような状況になると相続人の負担が非常に大きくなってしまいます。
しかし、反社会的勢力の者であっても法定相続人である場合は勝手にその人を省いて遺産分割協議を行うことはできません。まずは被相続人が保有していた預貯金や株式、不動産などの財産を一覧にし、丁寧に交渉するようにしましょう。
反社会的勢力の相続人に財産を遺さない方法
反社会的勢力の相続人に財産を遺したく無いと考えている場合どのような方法があるのでしょうか。生前にできる対策として具体的な方法を解説します。
遺言の作成
生前に遺言の作成をすることで自分の財産の配分を決めることができます。そのため、遺言書に特定の人に対して遺産を遺さない旨を記載しておけば基本的にはその人には財産が渡ることはありません。
しかし、配偶者や子どもには最低限の財産を遺産相続で引き継ぐ権利である遺留分があります。遺留分は遺言を作成していても侵害することができません。本人が遺留分について請求した場合、他の相続人は遺留分相当分の金銭を支払う必要があります。遺留分を請求する意思表示をされる可能性がある場合は遺言どおりに財産を取得することができません。
相続が開始した後に関係を持ちたくない場合は先に執行者を指定しておくことも有効です。遺言の執行者とは遺言のとおりに手続きをする人のことです。執行者は司法書士など専門家に依頼することも可能です。執行者に依頼することで、相続人同士で連絡を取る必要がなくなります。
相続廃除
相続廃除とは親などに対し、侮辱行為や暴力や虐待、重大な非行があった場合に推定相続人から排除して相続権を失わせることができる手続きです。
相続発生前に推定相続人を廃除できるのは本人だけです。相続廃除は家庭裁判所で推定相続人廃除の審判申立書の申請をして提出し、廃除に該当するか審判が行われます。
廃除が認められたら、被相続人の戸籍がある市区町村役場で廃除を届け出ることで手続きが完了し、相続人から廃除することが可能となり、排除された人は相続する権利を失うという流れです。
相続廃除に近い制度として、「相続欠格」というものもあります。相続欠格は被相続人を殺害する行為や強迫によって遺言書を作成させた場合や偽造や変造させた場合が該当します。相続廃除は本人が申請して行うことになりますが、相続欠格は相続欠格に該当するという事実があれば、自動的に相続権を失います。ただし、相続欠格となった場合でも代襲相続は発生しますので、注意が必要です。
相続のトラブルは専門家に相談を
相続は人生で何度も経験することではありませんので経験がないことは当然です。親族が亡くなってから財産を受ける時の手続きは複雑で、死亡した人の財産の配分の話し合いだけでなく、不動産の登記や金融機関の名義変更の手続きもあります。
自分で解決することが難しい場合や問題が発生しどのように対処していいか判断が難しいケースでは各種専門家に相談することを検討してみても良いでしょう。
特に今回ご紹介したような法定相続人の中に反社会的勢力の人がいる事例など、トラブルになりそうなケースでは早めに弁護士や司法書士等、資格を持つ専門家にサポートを依頼をして手続きを進めることをおすすめします。特に相続税に申告が必要な場合、相続発生から10ヶ月以内に申告を完了させる必要があります。預金や土地・建物の金額も確認し、基礎控除を超えるようなら期限も気にしながら手続きを進める方がよいでしょう。
初回の相談は無料で応じている事務所も多いので、まずは気軽に電話やメールなどで事業承継や相続に強い、実績のある専門家に問い合わせてみるとよいでしょう。