相続が発生するとあらゆる相続財産を引き継ぐことになりますが、権利関係が複雑になっているなど、相続すると管理の手間や費用的な負担がかかる財産もあるでしょう。
相続人が不安に思うケースが多いのが借地権の相続です。借地権を相続することで特有のデメリットや注意点があります。
当記事では借地権を相続する際の注意点や対処法などについてポイントをおさえて案内いたします。
目次
- 借地権とは
- 借地権付き建物を相続するデメリット
- 地代を支払う必要がある
- 地主とトラブルになる可能性がある
- 売却できないケースが多い
- 相続放棄をする際の注意点
- 期限を過ぎるか単純承認をすると放棄はできない
- 他の財産も相続できない
- 遺言書の作成がおすすめ
- 遺産相続のお悩みは専門家に相談を
借地権とは
借地権とは人の土地を借りて建物を建てることができる権利のことです。通常は自分の土地の上に自分で建物を建てることが多いですが、借地権者が借地の上に建物を建てているケースがあります。
借地権付き建物を保有している場合は、地主に地代を支払い、建物を保有します。借地権つきの建物を保有している人が亡くなった場合は借地権と建物を法定相続人が取得することができます。
借地権付建物を保有している場合、建物の売却や解体、他人に賃貸する場合なども地主の承諾が必要となるなど、自由に使うことができないことも多いです。
借地権の中には一定期間が経過すると建物を解体し、更地にしてから返還する契約となっているものもありますので、契約内容をよく確認しておく必要があります。
借地権付き建物を相続するデメリット
借地権付き建物を相続することは通常の所有権を有する土地・建物を相続する場合に比べてどのようなデメリットがあるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。
地代を支払う必要がある
借地権付建物は住んでいなくても保有しているだけで地代や契約更新時の更新料を支払う必要があります。土地は所有権を有していないため、固定資産税を支払う必要はありませんが地代の方が高いケースが多いです。
そのため、通常の所有権付き建物よりも費用が多くかかることが多いです。
地主とトラブルになる可能性がある
所有権を有する場合でも空き家になってから放置すると周辺住民から苦情が来るケースもありますが、借地権付建物の場合は、しっかりと管理しておかないと地主とトラブルになるケースが多いです。
地主とトラブルになった場合は弁護士に対応を依頼するなど負担が大きくかかるケースもあります。
売却できないケースが多い
借地権付き建物は不動産として売却することもできますが、土地・建物両方の所有権を有している場合と比べて価値が低く売却が難しいケースが多いです。不動産を購入する人も、売却する際に許可がないとできないことや地主との関係や地代の支払いなど、何をするにも勝手にはできないことを敬遠する人が多いでしょう。
売却する際は借地権付建物として売却するか、地主に買い取ってもらうか、逆に地主から土地を買取りするという方法もありますが、どれも対応がうまくいくとは限りません。
相続放棄をする際の注意点
借地権を相続することは避けたいと思い、遺産の放棄を選択しようと考える人もいるでしょう。相続放棄をする際の注意点について解説します。
期限を過ぎるか単純承認をすると放棄はできない
相続放棄をする場合は原則、死亡3か月以内に家庭裁判所に戸籍謄本などの添付資料とともに書類を提出する必要があります。期限を過ぎると相続放棄をすることができなくなります。
また、相続発生後に財産の処分などを行った場合は単純承認したものとみなされて、相続放棄ができなくなります。建物が老朽化し、他人に被害が及ぶ可能性がある場合は対応する必要がありますが、建物を解体するなどの行為を行った場合は相続放棄をすることができなくなりますので注意しましょう。
他の財産も相続できない
相続放棄をした者は初めから相続権を失いますので、全ての資産を引き継ぐ権利・義務を失います。相続放棄は財産を選んでできるものではありませんので、相続放棄を行うと被相続人が所有していたすべての財産を引き継ぐことができなくなります。
相続放棄をすることで、被相続人が負っていた借金を返済する義務もなくなり負担はなくなりますが、預金や株式などプラスの財産も引き継ぐことができなくなります。
相続放棄を行ってから思わぬ財産が見つかる事例もありますので、慎重に財産の内容を調査して確認してから相続放棄を行うかどうか検討するようにしましょう。
遺言書の作成がおすすめ
借地権付の建物がある場合、誰が相続するかでトラブルが発生し手続きが進まない状況になるケースも多いです。相続人同士のトラブルを回避するために有効な手段が生前に遺言を書いておくことです。
相続が発生すると短い期間で手続きを進めていく必要があります。相続が発生する前に遺言書を準備しておけば、相続人全員で集まって協議して合意を得る必要がありませんので、名義変更などの手続きもスムーズに進めることができるでしょう。
ただし、遺言書を作成しても、遺留分を侵害すると遺留分を侵害された人が請求した場合、遺言どおりに遺産分割をすることができません。遺言書の内容や書き方が分からない場合は弁護士や司法書士、税理士などに依頼し、サポートを受けて一緒に内容について検討すると安心して進めることができます。
遺産相続のお悩みは専門家に相談を
遺産相続の手続きをする際は正確な判断をするために民法や相続税の知識も必要となり、相続人にはかなりの負担がかかります。また、相続人同士で誰が何を相続するかでトラブルとなる可能性もあり、精神的な負担も大きいです。
相続税の税金の計算は国税庁のサイトには記載されていますが、さまざまな理由で評価額が減額されたり、特例の利用により、低くなる場合もあります。相続税は特例以外でも個別性が高く、慣れていない人にとっては簡単なものではありません。
相続手続きに不安がある場合は手続きの流れをよく理解する専門家に相談することが大切です。法律事務所や税理士事務所などで専門家に依頼することで、トラブルや相続税に対して適切な対策を講じることができます。
清澤司法書士事務所はみなさまの相続に関するさまざまな手続きをサポートいたします。初回の相談は無料で対応しておりますので、相続の手続きに不安がある場合は電話やメール等でお気軽にご連絡ください。