
はじめに:話しづらい“相続”と向き合うために
「親はまだ元気だし、縁起でもない」—相続の話はそんな楽観的な気持ちと、「面倒そう」「話しづらい」という遠慮や不安が重なり、つい後回しになりがちです。
とはいえ、もしもの時に備えて、家族と向き合う準備はしておきたいものです。
「どう切り出せばいいか」「いつ話すべきか」と悩む方へ、実務と感情の両面からサポートするヒントをお届けします。
司法書士、行政書士、弁護士、税理士──それぞれの専門家には得意分野があります。 この記事では相続に関する専門家の違いと、相談すべきタイミングなどをわかりやすく解説します。
目次
- なぜ家族と相続の話がしづらいのか?─感情と遠慮の壁、そのままにするとどうなる?
- 相続の話を切り出すならいつ?──自然に話せる“きっかけ”の見つけ方
- 揉めないための伝え方─“準備”として話すコツと第三者の力
- 司法書士が勧める“事前準備”の3つのステップ
- まとめ:悩んでいる今こそ、安心の一歩を
なぜ家族と相続の話がしづらいのか?─感情と遠慮の壁、そのままにするとどうなる?
死やお金にまつわる話題は、どうしても心理的なハードルが高く、家族の間でも言い出しづらさが生まれがちです。複数の思い込みや感情、状況が絡み合っていることも少なくありません。多様化しているその背景を整理してみましょう。
 📌 楽観的な思い込み
「うちは兄弟仲がいいから、揉めることはない」
「親が元気だから、まだ先の話。なんとなく長生きしそうだし」
 📌 相続=特別な人の話という誤解
「相続ってお金持ちの話でしょ?うちには関係ない」
「不動産もないし、手続きするほどの財産じゃない」
 📌 親への遠慮・信頼の思い込み
「親が終活してるって言ってたし、ちゃんと考えてくれているはず」
「親の気持ちを傷つけたくないから、話しづらい」
 📌 話し合いの面倒さ・感情的な負担
「兄弟だと感情的になる。自分から切り出すと、丸投げされそう」
「遠方でしばらく会っていない。まじめな話ができない」
話し合いを避けてしまうと、後になって思わぬ行き違いや問題が生じることがあります。実際、相続に関する多くのトラブルは、事前に十分な対話がなされていなかったことが背景にあります。
親の意向が家族全員に共有されていないと、個別の会話が“口約束”として残り、それぞれが違う記憶や解釈をしてしまうことがあります。「長男に継がせると言っていた」「いや、全員で分けると聞いた」など意見が食い違うと、相続時に話がこじれる原因になります。
実際に起こりうるリスクとして、以下のような事態が挙げられます:
・兄弟間での主張が食い違い、遺産分割協議が進まず家庭裁判所での調停に発展
・「言った・言わない」の水掛け論がこじれて親の死後、家族がバラバラに
・不動産の名義変更ができず、空き家のまま放置されることで固定資産税や管理負担が増加
・預金や保険が凍結されたまま数年単位で動かせず、生活費や葬儀費用に支障が出る
相続は、家族の信頼関係が試される場面といえるかもしれません。だからこそ、口約束に頼らず、事前に話し合いの場を重ね、親の意向や財産の概要を共有しておくことが、トラブルを防ぐ第一歩です。
相続の話を切り出すならいつ?──自然に話せる“きっかけ”の見つけ方
相続の話は、突然切り出すと重く受け止められがちです。だからこそ、自然な流れで話せる“きっかけ”が大切です。
 親の体調や生活に変化が見られたときは、将来について話すきっかけになりやすいタイミングです。
親の体調や生活に変化が見られたときは、将来について話すきっかけになりやすいタイミングです。
たとえば、通院が増えたり、体力の衰えを感じるようになったりすると、「これからのこと、少しずつ考えてみようか」といった会話が自然に生まれます。
ただ、離れて暮らしていたり、逆に毎日顔を合わせていると、「いつでも話せる」と思ってしまい、ちょっとした変化に気づきにくいこともあります。
そんなときは、日頃の何気ない習慣が役立ちます。
✅電話やLINEで定期的に近況を聞く(「最近どう?」「病院行った?」など)
✅写真や動画を送ってもらうことで、表情や動きの変化に気づく
✅通院履歴や薬の管理を一緒に確認する(「薬、変わった?」など)
✅帰省時に「歩き方」「食事の量」「話すスピード」などを意識して観察する
こうした日常的なやりとりを重ねることで親の変化に早めに気づき、「今のうちにできる準備ってあるかな?」「階段に手すりをつけたほうがいいかもね」など、体調や暮らしの話題から将来の話にも自然につなげやすくなります。
もちろん、法事や帰省など家族が集まる場で話すこともできますが、その場だけで本題に入ろうとすると、唐突に感じられてしまうこともあります。
日常のやりとりが積み重なっていれば、いざという時に「そういえば前に話してたね」と、スムーズに本題へ入るきっかけになります。
相続の話は、一度で完結するものではありません。少しずつ、繰り返し、無理なく話せる関係性を築いておくことが、家族の安心につながります。
揉めないための伝え方─“準備”として話すコツと第三者の力
相続の話を切り出すタイミングがあっても、いざ本題に入ろうとすると、構えてしまったり、話がそれてしまったりすることがあります。
そこで、災害への備えとして非常食や避難ルートを確認するように、家族の情報や財産も「もしもの備え」として整理しておく、と考えてみてはいかがでしょうか。防災と同じく、相続の準備も「心配だから」というより、「今のうちにできることを整えておこう」という前向きな姿勢で進めると、話しやすくなります。
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✅ステップ1:防災の話から入る
「最近地震が多いし、避難グッズ見直そうと思ってるんだ」
「もしもの時に連絡先とか、通帳の場所ってわかるようにしておいたほうがいいよね」
こうした話題は、家族の安全や生活に関わることなので、相手も受け止めやすく、構えずに話せます。
✅ ステップ2:住まいや財産の確認へつなげる
「この家の名義って今どうなってるんだっけ?災害保険のこともあるし、一緒に確認してみようか」
「お父さんはこの家に住み続けたい?将来的に誰と住みたいと思ってる?」
「家の中で改装したいところとか、処分したいものってある?」
住まいの話は、防災・介護・相続のすべてに関わる重要なテーマです。無理なく将来の希望を聞くきっかけになります。
✅ ステップ3:生活資金や契約の整理
「預金や保険のことも、災害時にすぐ使えるように整理しておけると安心だよね」
「スマホの契約とか、サブスクって誰が管理してる?災害時に止められないと困るかも」
こうした話題は、災害時の対応と相続の準備が重なる部分。実務的な視点から冷静に話し合えます。
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一度で全部話そうとせず、「今日はここまで」「次回はこのテーマを確認しよう」といった小さなゴールを設定することがポイントです。
兄弟姉妹がいる場合は、事前に「誰が何を聞くか」「どの順番で話すか」を共有しておくと、話がまとまりやすくなります。
兄弟間で意見が分かれそうな場合や、一人で進めるのが不安な場合は、司法書士などの専門家に同席してもらうのも有効です。専門家が入ることで、冷静な進行と公平な視点が得られ、家族だけでは難しい部分も安心して進められます。
相続の話は、感情が絡みやすいからこそ、段階的に整理しながら進めることが大切です。「揉めないため」ではなく、「安心のために今できることを考えておこう」という気持ちで、少しずつ話し始めてみましょう。
司法書士が勧める“事前準備”の3つのステップ
話し合いができたとしても、「実際、何をどこまで整理しておけば安心なのか」がわからず、手が止まってしまうことがあります。
そこで、司法書士が勧める“事前準備”の3ステップをご紹介します。家族で共有しやすく、無理なく進められる内容にまとめました。
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✅ ステップ1:財産の棚卸し
まずは、親の財産がどこに何があるのかを把握することから始めましょう。すべてを完璧に揃える必要はありません。「見える化」することが第一歩です。
🔹確認すべき項目
| 項目 | 内訳 | 備考 | 
|---|---|---|
| 銀行口座一覧 | 銀行名・支店・口座種別 | 通帳・アプリで確認 | 
| 不動産の登記情報 | 所在地・名義・固定資産税の通知書 | 共有名義の場合、持分の割合を確認 | 
| 保険契約の有無 | 保険証券・契約番号 | 見直しも視野に入れる | 
| 借入・ローン | 金融機関・残債額 | プラスの財産より借金が多い場合は相続放棄の検討が必要 | 
| 貴重品・骨董品・金銭価値のある物品 | 美術品・工芸品・宝飾品・貴金属・ブランド品 | 整理・処分も考える 価値の判断は“購入価格”ではなく“相続時の時価”が原則 | 
💻 デジタル資産の棚卸しも忘れずに
相続の準備では、預貯金や不動産だけでなく、スマホやパソコンに紐づく“デジタル資産”の整理も重要なポイントです。親世代でも、意外と多くの情報がオンラインに残されています。
📌スマホ・PCのロック解除情報(PINコード、指紋認証など)
📌オンラインショッピングのID・パスワード(Amazon、楽天など)
📌サブスクリプション契約(新聞の電子版、音楽・動画配信サービスなど)
📌SNSアカウント(Facebook、LINE、Instagramなど)
📌クラウドストレージ(Google Drive、iCloudなど)
契約内容やログイン情報などが本人しか知らないままになっていると、家族が必要なときにアクセスできず、困る原因になります。デジタル資産は、目に見えないからこそ棚卸しの優先度が下がりがちですが、相続人にとっては「見えない財産」でもあります。
一覧表にまとめる際は、以下のような項目を記録しておくと安心です:
・サービス名(例:Amazonプライム)
・ログインID(メールアドレスなど)
・パスワード(紙に書く場合は保管場所も明記)
・契約内容(有料/無料、更新日など)
・解約の方法や連絡先
サブスク契約やSNSアカウントの整理は、“本当に必要なもの”を見直し、家計の負担を減らすきっかけにもなります。スマホやPCを使っている親御さんには、「今のうちに不要なものは整理・解約しておこうか」といった声かけから始めてもよさそうです。
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✅ ステップ2:家族で続けるリスト管理
財産の棚卸しやエンディングノートは、作って終わりではなく、定期的に見直して育てていくものです。状況は時間とともに変わるため、家族で情報を共有しながら、無理なく続けられるしくみを整えておきましょう。
📌見直しタイミングを決める 
誕生日・年末年始・確定申告前など、家族が集まりやすい時期に「そろそろリスト確認しよう」と声をかけるだけで十分です。このタイミングで、非常食や備蓄品の期限、薬や防災グッズの状態も一緒に確認すると、生活の安心も整えられます。こうした習慣が、家族の会話や集まりの自然なきっかけにもなります。
 📌更新履歴を残す
リストには「最終更新:2025年9月」などの履歴を記載しておくと、何が変わったかがすぐにわかり、次回の見直しもスムーズです。優先順位も自然に見えてきます。
 📌クラウドと紙で共有する
Google Driveなどのクラウドに保存すれば、遠方の家族とも情報を共有しやすくなります。紙で印刷して親の保管場所に置いておくと、デジタルに不慣れな世代にも安心です。 両方を使う場合は、最新版の場所と更新日をひとこと伝えるだけで混乱を防げます。
 📌日常の変化はすぐメモ 
「保険を見直した」「スマホを機種変更した」など、日常のちょっとした変化をメモしておくと、次回の更新がラクになります。
リスト管理は、家族の安心を育てる“習慣”です。変化に気づき、共有し、更新していくことで、棚卸しリストは「もしもの時に頼れる情報」へと育っていきます。
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✅ ステップ3:介護ともしもの備え
財産の棚卸しと情報管理が整ってくると、「もしもの時」に備える準備も、少しずつ現実的に考えられるようになります。 たとえば、「介護が必要になったら誰が動く?」「契約は誰が引き継ぐ?」といった問いが自然と浮かびます。
こうした気づきは、感情的な不安ではなく、前向きな準備のきっかけになります。
 📌連絡体制を決めておく 
たとえば親の介護が始まったとき─誰が最初に連絡を受けるか、誰が現地対応や手続きをするかなど、家族で役割分担を共有しておくと安心です。LINEグループや連絡表があると、緊急時もスムーズです。
 📌親の希望を聞いておく
「自宅で過ごしたいか」「施設を希望するか」「誰に世話を頼みたいか」など、本人の意思を確認しておくことで、家族の迷いや葛藤を減らせます。「元気なうちに少しだけ聞いておきたいんだけど」といった声かけなら、自然に話しやすくなります。
 📌エンディングノートや連絡先リストを作る 
法的効力はなくても、介護・葬儀・財産管理に関する希望を記録しておくことで、「誰に連絡するか」など家族が迷わず動けるようになります。
 📌成年後見制度や家族信託の検討
判断力が低下した場合に備えて、財産管理を委任するしくみを整えておくのも選択肢のひとつです。 司法書士に相談すれば、状況に応じた制度の活用方法を具体的に教えてもらえます。
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介護やもしもの話は、重く感じられることもありますが、「元気なうちに少しだけ話しておく」ことで、家族の不安を減らし、親の気持ちも尊重できる準備が整います。 小さな確認の積み重ねが、いざという時の大きな安心につながります。
まとめ:悩んでいる今こそ、安心の一歩を
家族間での話し合いや情報の整理、介護やもしもの備えなど、相続にまつわる準備は、内容が多岐にわたるため、いざ始めようとすると「何から手をつければいいのか」「誰に相談すればいいのか」と迷ってしまいがちです。
そんなときこそ、司法書士のサポートを活用することで、不安を整理しながら、安心して進めるきっかけが得られます。
司法書士は、実務だけでなく、家族の気持ちを整理し、冷静に話し合える環境を整える“調整役”としても心強い存在です。
✅ 司法書士に相談することで得られる安心と支援
・財産の名義や登記の確認・変更 
・遺言書の作成や保管方法のアドバイス
・家族信託や後見制度の設計サポート 
・家族間の調整役として、話し合いの進行を支援
当事務所では、初回相談無料・不動産売却まで一括対応しております。相続や不動産のこと、どこから手をつければいいか迷っている方も、どうぞお気軽にご相談ください。 あなたの状況に合わせて、無理なく進められる方法をご提案いたします。
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