親と縁を切った場合の相続|相続権は残るのか、放棄すべきか

目次

相続が発生すると相続人が財産や債務を引き継ぐことになります。一方で、親と縁を切っている子はどのような扱いになるのでしょうか。当記事では親と縁を切った人の相続について解説します。

親と縁を切ると相続権はなくなるのか?

「もう何年も会っていない」「親とは完全に絶縁状態だ」
このような場合でも、法律上の相続権が自動的に消えることはありません。

感情的な“縁を切る”と、法律上の“相続権”はまったく別問題です。
まずはこの点を正確に理解しておくことが重要です。

法律上「縁を切る」という制度はあるのか

結論から言うと、親子関係を一方的に解消する制度はありません。

親子関係を法的に消す方法は、原則として「特別養子縁組」など極めて限定的なケースのみです。
単に

  • 連絡を取らない

  • 戸籍を分ける

  • 勘当される

といった事情では、親子関係は法的に消えません。戸籍を分ける(分籍)を行えば、相続権が無くなると考える人も多いですが、戸籍を分けるだけでは相続権は消えません。「絶縁=相続権がなくなる」わけではないのです。

絶縁していても法定相続人になる理由

民法では、被相続人(亡くなった人)の配偶者や子は当然に法定相続人になると定められています。

これは、

  • 親子関係が悪化している

  • 長年会っていない

  • 生活の援助を受けていない

といった事情とは無関係です。

相続は、あくまで血縁・法律関係によって決まる制度だからです。

音信不通・長年未交流でも相続権は消えない

たとえ10年、20年会っていなくても、

法定相続人である事実は変わりません。

「関わっていないから自分には関係ない」と考えるのは危険です。

親と縁を切っていても相続は発生する

相続は、感情とは関係なく法律上自動的に発生する制度です。

絶縁していても、親が亡くなった瞬間に相続は始まります。

相続は被相続人の死亡で自動的に開始する

民法では、相続は「死亡」によって開始すると定められています。

  • 手続きが必要

  • 通知が来てから始まる

というものではありません。

死亡=自動的に相続開始です。

その瞬間から、相続人には

  • 財産を取得する権利

  • 借金を引き継ぐ可能性

が発生します。

知らなかった場合でも相続人になるのか

「亡くなったことを知らなかった」という場合でも、法律上は相続人になります。

ただし、相続放棄の期限は

「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」

とされています。

つまり、本当に知らなかった場合は、その“知った時”からカウントされます。

しかし、証明が難しいケースもあるため注意が必要です。

親に借金がある場合の注意点

相続では、財産だけでなく借金も引き継ぎます。

例えば、

  • 消費者金融の借入

  • 住宅ローン

  • 連帯保証債務

  • 未払い税金

なども相続対象になります。

「絶縁していたから借金は関係ない」ということにはなりません。

何もせず放置すると、債権者から突然請求が来る可能性もあります。

相続したくない場合の選択肢

「関わりたくない」
「借金があるかもしれない」

そのような場合には、法律上の手続きを検討する必要があります。

相続放棄とは何か

相続放棄とは、

最初から相続人でなかったことにする制度

です。

家庭裁判所に申述することで、

  • 財産も

  • 借金も

一切引き継がないことになります。

相続放棄の期限(3か月ルール)

相続放棄は、

相続開始を知った日から3か月以内

に家庭裁判所へ申述する必要があります。

これを過ぎると、原則として放棄はできません。

絶縁しているケースでは、

  • 連絡が突然来る

  • 債権者から通知が来る

といった形で発覚することもあります。

その時点から迅速な判断が必要です。

限定承認という選択肢

限定承認とは、

相続財産の範囲内でのみ借金を引き継ぐ制度

です。

プラスの財産がある可能性もあるが、借金の全体像が不明な場合に検討されます。

ただし、

  • 相続人全員で行う必要がある

  • 手続きが複雑

という特徴があります。

何もしない場合に起こるリスク

最も危険なのは「放置」です。

何も手続きをしないまま3か月を過ぎると、単純承認したとみなされる可能性があります。

その場合、

  • 借金も全額負担

  • 差押えの対象になる

こともあります。

絶縁しているからこそ、

「自分には関係ない」と思い込まないこと

が非常に重要です。

相続放棄をすべきか判断するポイント

相続放棄は強力な制度ですが、一度行うと撤回できません。
そのため、「とりあえず放棄する」という判断はおすすめできません。

ここでは、親と縁を切っているケースで特に重要になる判断ポイントを整理します。

財産内容が不明なケース

親と長年連絡を取っていない場合、

  • どんな財産があるのか

  • 借金があるのか

  • 保証人になっていないか

が全く分からないことも珍しくありません。

このような場合、何も調べずに放棄するのは早計です。

理由は以下の通りです。

  • 実は借金がなく、プラスの財産が多い可能性がある

  • 不動産や預貯金の存在を後から知っても取り戻せない

財産調査が難しい場合は、
「限定承認」や「熟慮期間の延長」も含めて検討すべきケースがあります。

感情的理由だけで放棄してよいのか

「関わりたくない」「顔も見たくない」
この気持ちは自然ですが、感情だけで放棄することにはリスクがあります。

相続放棄をすると、

  • プラスの財産も一切受け取れない

  • 後から気が変わっても撤回できない

という結果になります。

感情と法律は分けて考え、
「経済的にどうか」「将来の影響はないか」**を冷静に整理することが重要です。

兄弟姉妹への影響も考える必要がある

相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかった扱いになります。

その結果、

  • 他の兄弟姉妹に相続分が移る

  • 放棄が連鎖的に影響する

といった事態が起こります。

「自分が放棄すれば終わり」ではなく、
家族全体への影響も考えた判断が必要です。

相続放棄の具体的な手続き

相続放棄は、必ず家庭裁判所での手続きが必要です。
口頭や書面だけでの意思表示では足りません。

家庭裁判所への申述方法

相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述します。

基本的な流れは以下の通りです。

  1. 申述書の作成

  2. 必要書類の収集

  3. 家庭裁判所へ提出

  4. 照会書への回答

  5. 相続放棄受理通知書の受領

期限内に正しく行うことが重要です。

必要書類と費用

主に必要となる書類は以下です。

  • 相続放棄申述書

  • 被相続人の戸籍(死亡の記載があるもの)

  • 申述人の戸籍

  • 被相続人の住民票除票戸籍の附票
  • 収入印紙

  • 郵便切手

費用自体は高額ではありませんが、
書類収集や判断ミスのリスクには注意が必要です。

放棄が認められた後の流れ

相続放棄が受理されると、

  • 財産も借金も一切引き継がない

  • 債権者からの請求に応じる必要がなくなる

という効果が生じます。

ただし、
放棄を証明する書類の保管は非常に重要です。

親と縁を切っている人が特に注意すべきこと

絶縁しているケースでは、一般的な相続よりもトラブルが起こりやすい傾向があります。

突然、債権者から請求が来るケース

よくあるのが、

  • 消費者金融

  • クレジット会社

  • 管理会社

などから、突然請求書が届くケースです。

この時点で初めて相続を知る人も少なくありません。

慌てて支払ったり、連絡を取ったりすると、
相続を承認したと判断されるリスクがあります。

連帯保証人になっている場合

親の借金について、

  • 連帯保証人

  • 保証人

になっているケースもあります。

親が保証人になっている場合は相続放棄をすることが可能ですが自分自身が保証人となっている場合は、
相続放棄をしても保証債務が消えることはありません。

相続財産を処分してしまうと放棄できない

相続財産を

  • 売却する

  • 解約する

  • 引き出す

といった行為をすると、
相続を承認したとみなされる可能性があります。

「処分」と評価されるかどうかは判断が難しいため、
行動する前に専門家へ相談することが重要です。

まとめ|縁を切ることと相続は別問題

感情と法律は分けて考える

親と縁を切っていても、

  • 相続は自動的に発生する

  • 何もしないことが最も危険

という現実は変わりません。

感情的な判断ではなく、
法的・経済的な影響を整理した上で選択することが重要です。

迷ったら早めに専門家へ相談を

相続放棄には期限があります。
一度の判断ミスが、大きな不利益につながることもあります。

  • 財産内容が不明

  • 借金の可能性がある

  • 連絡を取りたくない

このような場合こそ、
早めに専門家へ相談することが、最も安全な選択です。

当事務所では相続に関するあらゆるお悩みを解決しております。初回の相談は無料で対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

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