相続・贈与マガジン2019年5月号

数字でみる相続

27年

 国土交通省の『平成30年都道府県地価調査』によれば、同年7月1日時点において、基準地価の全用途平均が平成3年以来27年ぶりに下落から上昇に転じました。平成3年といえばまさにバブル景気の地価上昇の時期。それ以来となる今回の地価上昇は大きなニュースと言えるかもしれません。
 今回の調査で地価上昇が最も大きかったのが商業地です。これは外国人観光客の増加や、2020年のオリンピック需要が要因だと考えられます。基準地価は直接的には相続税に関連しませんが、相続税の算定基礎となる『路線価』は公示地価の8割程度が目安となっており、この公示地価は基準地価の評価方法とほぼ同じです。そのため、基準地価の上昇は間違いなく相続税にも影響を及ぼすものと思われます。

資産安心コラム

思わぬ出費に! 相続税にまつわるペナルティ

 相続税の申告や納税は、相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内に現金で一括納付するという決まりがあります。
 この期限以内にできなかった場合のほか、申告にミスや不正があった場合には、延滞税、加算税、もしくは重加算税などの税金がかかります。

相続税のペナルティは申告・納税ミス時に発生

 納付期限に遅れた際のペナルティとして『延滞税』のほか、『無申告加算税』や『重加算税』などがあります。
 また税務調査で過少申告したことを指摘されて修正申告をした場合は、『過少申告加算税』や『重加算税』がかかります。

(1)延滞税

 延滞税は、支払期限から遅れることで発生する税金です。支払期限の次の日から2カ月以内の場合は年7.3%、または、特例基準割合+1%のうち低い方の割合で計算されます。2カ月を超えた場合には年14.6%、もしくは、特例基準割合+7.3%と比べて低い方の割合が適用されます。

(2)加算税(税務調査後前提)

 過少申告加算税は、本来の相続税よりも少なく申告した際に課せられる税金です。追加納付額×10%で算出されます。当初の申告した税額と50万円のうち多い方の金額を超
えた分に関しては、15%の割合となります。
 無申告加算税は、追加税額のうち、50万円以内の部分は15%、50万円を超える部分は20%の割合となります。

(3)重加算税

 重加算税は、相続税の課税対象になっているにもかかわらず、証拠の偽造や隠蔽をした際に課せられる税金です。過少申告の場合35%、無申告の場合には40%が課税されます。

 相続放棄・相続限定承認は、相続の開始を知った日から3カ月以内、故人の所得税の準確定申告は、相続の開始を知った日の翌日から4カ月以内、というように、相続にまつわ
る申告・納税はそれぞれ期限が異なます。
 そのほか、相続人の青色申告届出(事業を引き継ぐ場合)は相続発生から4カ月以内と定められています。
 相続が発生した際、まずは自身がどの状況に当てはまるのかを確認する必要があるでしょう。

今からできる相続対策

相続人の9割が失敗する相続準備(1) ~改製原戸籍の取得~

被相続人に関する一生分の戸籍が必要

 相続が開始されたときにまず必要なのが、『相続人』と『相続財産』を確定させることです。原則として、配偶者、子ども、子どもがいない場合は両親、両親もいなければ兄弟姉妹が相続人となるため、まずは被相続人が生まれてから亡くなるまでの連続し
た全戸籍を取得して相続人の存在を調べなければなりません。
 さらに、相続人に該当する子どもと兄弟が被相続人よりも前に死亡している場合には、代襲相続(被相続人から見て孫、ひ孫、甥、姪などが相続財産を受け継ぐこと)が生じます。この場合は孫の存在を調べなければならないため、相続人の一生分の戸籍(除籍謄本、原戸籍、戸籍謄本)も必要となってきます。

相続人確定のためには『改製原戸籍』も必要

 戸籍は法改正の際につくり直され、つくり直される前の古い戸籍を『改製原戸籍(または原戸籍)』と呼びます。相続人を確定する際には、被相続人や相続人の一生分の戸籍に加えて、この改製原戸籍も取得しておかなければなりません。なぜなら、改製が行われる時点で婚姻、離婚、死亡などの理由で戸籍から抹消されていた場合、改製後の戸籍にはそれが引き継がれていないためです。改製原戸籍がなければ、婚姻や死亡などの事実確認ができない可能性があります。

改製原戸籍の取得には手間も時間もかかる

 相続手続きに欠かせない改製原戸籍。実は、その取得にはかなりの手間や時間、費用がかかるので注意したいところです。
 たとえば結婚や離婚、引っ越しなどで本籍地を移転していれば、それだけ取得する戸籍が増えることになります。相続人が多い家族や、婚姻、離婚を繰り返して家族関係が複雑な家庭などでは、取得に数カ月かかることも珍しくないのです。また、市町村の統廃合があった場合、管轄の役所を確定すること自体が大変なこともあります。
 相続税の納税期限は相続開始を知った日の翌日から10カ月ですが、この改製原戸籍の取得が遅れてしまったがために相続税の申告期限に間に合わなかったというケースもあります。
 今回は、相続準備で失敗しやすい“改製原戸籍の取得”について解説しました。相続人を確定するためには、改製原戸籍の取得は不可欠です。相続準備には早めに着手し、もれなく行うようにしましょう。

相続の基本講座

子どもも両親もいない夫婦の場合 誰が相続人となる?

Q

 夫が亡くなりました。遺言書はありません。私たち夫婦には子どもがおらず、夫の両親も他界しています。兄弟はいますが、高齢で亡くなっている人もいます。この場合、誰が相続人になるのでしょうか。

A

配偶者である妻、夫の兄弟、亡くなった兄弟の子どもが相続人となります。

配偶者以外の相続人は相続順位が定められている

民法では、配偶者以外の相続人について順位が決められており、第一順位は子ども、第二順位は両親、第三順位が兄弟姉妹となっています。
 また、相続には『代襲相続』という制度が設けられており、被相続人よりも相続人が先に死亡しているときなどには、その者の子どもが代襲して相続人となるとされています。
 今回のケースでは、子どももおらず両親も他界していることから、相続人となるのは配偶者である妻と夫の兄弟です。もしも亡くなった兄弟に子どもがいる場合は代襲相続が起き、その子ども(甥や姪)が相続人になります。

兄弟や代襲相続人がいると遺産分割の手間がかか

 子どもも親もいない場合、多くの被相続人は配偶者にすべての財産を遺したいと考えるもの。しかし遺言書がなければ、遺産分割協議をして、配偶者と兄弟で相続財産の分割について話し合わなければなりません。相続人は多ければ多いほど、話がまとまりにくいものです。
 さらに、一般的に親や子どもに比べて、兄弟や甥姪は関係が希薄になりがちです。また、行方のわからない相続人がいる場合、居所を突き止めて連絡を取るところから始めなければなりません。こういったことから、相続人に兄弟や甥姪がいるときは、遺言書を残しておかないと遺産分割には手間がかかることを知っておきましょう。

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