相続によって山林を取得したものの、「利用する予定がない」「管理が負担になっている」と悩む方は珍しくありません。
現在は需要の変化などにより、山林の価値は大幅に低下している地域も多く、相続しても使い道がなく売却も無理といったケースもよくあります。
そのような中で注目されているのが相続土地国庫帰属制度です。
一定の要件を満たせば、相続した土地を国に引き取ってもらえるケースもあるため、手放したい山林がある際は有効な方法です。
本記事では、相続土地国庫帰属制度で山林を手放せるのか、利用条件や申請手続き、注意点について解説します。
相続した山林は固定資産税などの負担が続くため、相続放棄との違いも理解したうえで、自分に合った方法を検討してみましょう。
- 相続土地国庫帰属制度とは
- 相続土地国庫帰属制度で山林は手放せる
- 相続土地国庫帰属制度で山林を手放す流れ
- 相続登記を行う
- 法務局へ相談する
- 承認申請を行う
- 審査・現地調査を受ける
- 負担金を納付する
- 山林が国庫帰属できないケース
- 境界が明らかでない山林
- 他人が利用している山林
- 管理や処分に多額の費用がかかる山林
- 土壌汚染や埋設物がある土地
- 相続土地国庫帰属制度を利用する際の注意点
- 必ず承認されるわけではない
- 負担金が発生する
- 審査に時間がかかる
- 相続土地国庫帰属制度以外で山林を処分する方法
- 山林専門業者へ売却する
- 隣接地の所有者へ譲渡する
- 自治体への寄付を検討する
- 相続放棄との違いを理解する
- 相続土地国庫帰属制度で山林を手放す際によくある質問
- Q. 山林なら必ず国に引き取ってもらえますか
- Q. 負担金はいくらですか
- Q. 相続登記前でも申請できますか
- Q. 農地や宅地も対象になりますか
- まとめ
相続土地国庫帰属制度とは
相続土地国庫帰属制度とは、相続または遺贈によって取得した土地を国へ引き渡せる制度です。
利用するには一定の要件を満たし、負担金を納付する必要がありますが、土地を売却する手間を省ける点が大きなメリットです。
相続した土地の所有者が法務局へ承認申請を行い、審査に通過した場合に土地の所有権が国へ移転します。
近年は相続登記が行われないまま放置される土地が増加し、所有者不明土地問題が社会問題となっています。
こうした状況を改善するため、2023年から相続土地国庫帰属制度が開始されました。
山林も制度の対象となりますが、すべての山林が国庫帰属できるわけではありません。
申請前に要件や却下事由を確認することが重要です。
制度の対象となる土地や申請内容、必要な資料を事前に確認しておくことで、不承認となるリスクを減らせます。
また、制度に関する最新情報は法務局で確認しておくと安心です。
相続土地国庫帰属制度で山林は手放せる
「相続土地国庫帰属制度」は、前述したように、相続や遺贈で取得した不要な土地を手放し、国に引き取ってもらうことができる制度です。
一定の要件を満たせば山林も相続土地国庫帰属制度を利用できます。
相続した山林の中には、利用価値が低く管理だけが負担になっているケースも珍しくありません。
固定資産税の負担は小さくても、草刈りや境界管理、倒木への対応なども必要なため、相続せずに手放したい方もいるでしょう。
しかし、相続放棄しても不動産は管理義務が生じる場合もあります。
また、売却したくても山林は買い手がつかないケースも多いです。
そのため、不要な山林を相続した所有者にとって、「相続土地国庫帰属制度」はとても有効な制度といえます。
ただし、山林だからという理由だけで承認されるわけではありません。
法務局による審査が行われ、制度の要件を満たしているか確認されます。
また、国庫帰属が認められた場合でも負担金として、土地の管理費用10年分相当が必要です。
なお、管理費10年分は、原則として20万円です。
相続土地国庫帰属制度で山林を手放す流れ
ここでは、山林を国庫帰属する際の手続きの流れをご紹介します。
利用を検討している方は、把握しておくとスムーズに行動できます。
相続登記を行う
まずは相続登記を行い、所有者を明確にする必要があります。
相続登記が完了していない土地は申請できません。
なお、2024年から相続登記は義務化されているため、未登記の場合は早めに手続きを進めましょう。
法務局へ相談する
申請前には法務局への相談がおすすめです。
土地の状況によっては承認されない可能性もあるため、対象になるか事前に確認しておくことで手続きをスムーズに進められます。
なお、以下のような条件を満たしていることが、制度を利用する条件です。
- 建物や工作物などがないこと
- 抵当権などの担保権および賃借権などの使用権が設定されていないこと
- 土壌汚染や地下埋設物がないこと
- 崖崩れなど、管理や処分に多額の費用や危険が伴う土地ではないこと
- 境界が明確であり、隣地との争いがないこと
一つでも当てはまるものがあれば、申請できないので注意が必要です。
法務局では、制度の対象となる土地かどうかだけではなく、必要な手続きや申請方法についても相談できます。
相談時には土地の状況が分かる資料を持参すると、より具体的な説明を受けられます。
疑問がある場合は、事前に相談することで申請をスムーズに進められるでしょう。
承認申請を行う
必要書類や資料を準備し、法務局へ承認申請を行います。
審査手数料と土地の登記事項証明書や位置図、現況を確認できる書類などが必要なので、用意しておきましょう。
必要書類や資料を作成し、準備が整ったら法務局へ承認申請を行います。
申請時は必要書類の添付漏れがないか確認し、提出前に内容を見直すことが大切です。
審査・現地調査を受ける
申請後は法務局による審査が行われます。
必要に応じて現地調査が実施される場合もあります。
土地の境界や管理状況、周辺環境などが確認され、国庫帰属が可能か判断されます。
調査の結果によっては追加資料の提出や、不承認となる場合もあるので、その点は承知しておきましょう。
負担金を納付する
承認された場合は負担金を納付します。
負担金は国が土地を管理するための費用として徴収されるもので、原則20万円ですが土地の種類や面積によって異なります。
納付が完了すると、土地の所有権が国へ移転します。
山林が国庫帰属できないケース
山林であっても、土地の状況や権利関係によっては制度の対象外となる場合があります。
ここでは、国庫帰属が認められない代表的なケースを紹介します。
境界が明らかでない山林
隣接地との境界が不明な土地は承認されない場合があります。
境界を巡る争いがある場合や、測量が必要な状況では申請前に解決しておく必要があります。
他人が利用している山林
第三者が通行や利用を行っている土地も注意が必要です。
権利関係が複雑な土地は管理負担が大きいため、国庫帰属の対象外となる場合があります。
管理や処分に多額の費用がかかる山林
崖地や災害リスクが高い土地など、通常の管理を超える費用が発生する土地は承認されない可能性があります。
土地の状態を確認しておきましょう。
土壌汚染や埋設物がある土地
土壌汚染や廃棄物の埋設が確認された土地も対象外です。
国が引き取った後に大きな管理負担が発生するためです。
相続土地国庫帰属制度を利用する際の注意点
ここでは、相続土地国庫帰属制度を利用する際の注意点をご紹介します。
必ず承認されるとは限らないので、注意しましょう。
必ず承認されるわけではない
承認申請を行っても、要件を満たしていなければ却下される場合があります。
特に山林は境界が不明なケースも多いため注意が必要です。
負担金が発生する
土地を国へ引き渡す場合でも無料ではありません。
負担金の納付が必要になるため、事前に金額を確認しておきましょう。
審査に時間がかかる
申請後すぐに国庫帰属されるわけではありません。
審査や現地調査が行われるため、一定の期間が必要です。
相続土地国庫帰属制度以外で山林を処分する方法
国庫帰属以外にも山林を処分する方法があります。
ここでは、その一例をご紹介します。
山林専門業者へ売却する
山林の売買を専門に扱う業者へ相談する方法です。
地域や立地によっては売却できる可能性があります。
隣接地の所有者へ譲渡する
隣地所有者が土地の取得を希望するケースもあります。
境界や利用方法が明確な場合は検討してみましょう。
自治体への寄付を検討する
自治体によっては寄付を受け付けている場合があります。
ただし、すべての土地を受け入れているわけではありません。
相続放棄との違いを理解する
相続放棄は相続そのものを放棄する制度です。
一方、相続土地国庫帰属制度は相続後に土地を手放す制度であり、両者は仕組みが異なります。
なお、相続放棄を選択した場合は、山林だけではなく相続財産すべてが対象となる点にも注意が必要です。
相続土地国庫帰属制度で山林を手放す際によくある質問
ここでは、相続土地国庫帰属制度で山林を手放す際によくある質問をご紹介します。
詳しい費用や制度の内容は法務局で確認し、不明な点は事前に相談しておくことをおすすめします。
負担金の算定方法や最新情報についても確認しておくと安心です。
Q. 山林なら必ず国に引き取ってもらえますか
A. いいえ。山林であっても、境界が不明な土地や管理・処分に多額の費用がかかる土地などは承認されない場合があります。
また、所有者や土地の状況によっては国庫帰属制度を利用できないケースもあります。
申請前に法務局へ相談し、対象となる土地か確認しておくと安心です。
Q. 負担金はいくらですか
A. 負担金は土地の種類や面積によって異なりますが、山林は原則20万円です。
また、申請時には審査手数料も必要になります。詳しい費用や制度の内容は法務局で確認し、不明な点は事前に相談しておくことをおすすめします。
Q. 相続登記前でも申請できますか
A. できません。まず相続登記を行い、土地の所有者を明確にする必要があります。
相続登記が完了していない土地は申請できないため、必要書類を準備したうえで手続きを進めましょう。
不明な点がある場合は法務局へ相談すると安心です。
Q. 農地や宅地も対象になりますか
A. 要件を満たせば農地や宅地、森林も対象になる可能性があります。
ただし、土地の面積や管理状況、境界の状態などによって審査結果は異なります。
制度の利用を検討している場合は、事前に法務局で対象となる土地か確認し、必要な手続きや流れを把握しておきましょう。
まとめ
相続土地国庫帰属制度は、一定の要件を満たした土地が対象となる制度です。
制度の内容や申請手続きを十分に確認したうえで、売却や相続放棄との違いも比較し、自分に合った方法を選びましょう。
なお、山林の状況によっては売却や寄付など他の方法が適していることもあります。
判断に迷う場合は法務局や専門家へ相談し、自分の土地が制度の対象となるか確認したうえで進めると安心です。















