相続時の戸籍謄本集めについて

ご親族が亡くなられた時の手続きは煩雑なものがあります。

なかでもお亡くなりになられた方の戸籍、改製原戸籍、除籍等(生まれてからお亡くなりになった時までの戸籍)の収集は場合によっては時間も費用も膨大です。身近な肉親を失い、ただでさえ気持ちが落ち込んでいる時に精神的な負担が大きい作業となります。

特に引っ越し等にともない何度も本籍を移している場合や、再婚等により除籍・入籍が多い方、また法改正により戸籍が新しい様式に数回かわっているためご高齢の方の場合は集めるべき戸籍の量が多くなり、大変さが増します。

なぜ亡くなった方の戸籍の収集が必要なのか

亡くなられた方の遺産を相続するためには、その方の法定相続人(法律で定められている遺産相続の権利を有する方。この話は以前のコラムで紹介しておりますので、ご興味のある方は「法定相続人確定までの流れ」をご覧ください)を特定する必要があります。

法定相続人を確定するのに必要となるのが戸籍で、お亡くなりになった方の出生時からお亡くなりになった時までのすべての戸籍を集め確認する必要があります。

集めた戸籍を使い、お亡くなりになった方に、現在の配偶者やお子様以外に相続の権利を持った方がいないかを確認します。

例えば「結婚前に認知しているお子様がいないか。」「相続は兄弟姉妹(第三順位)になった場合に、異母兄弟がいないか」等の確認をすることになります。

この時、お亡くなりになった方が生まれてからお亡くなりになるまで、本籍を移していなければ、戸籍収集も簡単に済ますことが可能ですが、結婚や引っ越し等で本籍を移した方などは、戸籍の収集先は移した先の数だけあることになり対応が煩雑なります。

また取得先の役所の係りの方に「相続で使用する」と伝えても、必要な戸籍は教えてくれません。そのため何度も役所に行くことになり、時間も費用も労力も費やすことになるのです。

戸籍収集手続きの簡略化の動き

下の記事は1カ月程前の日本経済新聞記事で、読まれたか方も多いかと思います。

(2019年3月9日 日本経済新聞)

前述のとおり、戸籍収集の手続きが煩雑であることに、政府がようやく重い腰を上げたという記事です。今の通常国会に提出(平成31年3月15日国会提出)されている戸籍法改正案では、現在住んでいる最寄りの市区町村役場の窓口で、かつて本籍を移していた市区町村に対して戸籍を請求することができる規定が盛り込まれているとのことです。

改正法案成立後の予定は、2024年にはシステム化を行いサービスを開始したいとなっております。

このシステムが実現すれば、お亡くなりになった方の戸籍の収集のために、わざわざ遠方の市区町村まで出向いたり郵送で戸籍の申請をしなくても、近くの役所で収集することが可能となります。

ただし、お亡くなりになった方が、どこに戸籍を移していたかがわからないと、過去の移転の経緯を調べながら戸籍を収集していく手間は変わりません。それでも1回役所に行き戸籍の記載をたどりながら過去の戸籍を収集していくことは可能となります。

戸籍収集の将来の展望

新聞の記事には、さらに将来のシステム構想も描かれています。そこには「マイナンバーをひも付けて…」とありますので、近い将来、「相続時の戸籍謄本集め」作業そのものがなくなるかもしれません。

そうなると、最寄りの役所に行ってお亡くなりになった方のマイナンバーさえ提示すれば、生まれてからお亡くなりになるまでの戸籍がすべて出てくる様になるでしょう。未来の司法書士は、今の「平成の司法書士業務」を聞いて驚くことになるのでしょうね。

この記事の執筆・監修

清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所の代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。

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