見知らぬ抵当権がついた不動産は売れないの!?

相続した不動産を売却しようとしたら、見知らぬ抵当権がついています!
債務者は亡くなった父。まったく事情は分からないし、書類もありません。
この不動産一生売れないのでしょうか!?

慌てなくても大丈夫です。

仰るとおり不動産を売却するには、原則抵当権の抹消登記が必要です。
「抵当権は万が一お金を返せないときは、この不動産を頂きます」というお約束なので、そんなリスクのついた不動産は買いたくないですよね。

ですが、なぞの古い抵当権であっても、抹消の方法はいくつか用意されています。
ここでは、その方法についてご案内いたします。

目次

抵当権の抹消

通常、完済すると金融機関から「完済しましたので抵当権を解除します」という内容の書類が届きます。その書類をもとに書類を作成し、法務局にて抵当権抹消登記手続きをします。この金融機関から届いた書類を紛失している場合がありますが、その際は金融機関へ連絡して再発行してもらうことで手続きが可能です。

しかし、相続した不動産となると、まったく事情のわからない古い抵当権(休眠担保)がついている場合があります。明治時代、大正時代や昭和初期に設定された抵当権で、抵当権者(債権者)が個人でどこにいるのかもわからないし、年齢的に生存しているわけがなく、相続人も誰だかわからない場合があります。そのような場合でも手続きの方法はありますが、通常の抵当権抹消登記に比べ時間も費用もかかってしまいます。手続き内容が複雑ですので、古い抵当権がついている不動産の売却は、清澤司法書士事務所にご相談ください。

抵当権の抹消方法

通常の抹消

不動産の所有者と抵当権者の共同申請です。

単独申請による抹消(債権者(=抵当権者)が行方不明)

抵当権者の所在がわからないため共同申請ができない場合、不動産の所有者が単独でできる抹消方法です。

(1)弁済証書による抹消方法

(2)供託による抹消方法

(3)除権決定による抹消方法

(4)判決による抹消方法

(1)弁済証書による抹消方法

完済した証拠書類(債権証書、契約書、領収書など)を法務局に提出する方法です。
しかし、書類が保管されていることはほとんどありませんので、現実にはあまり使われない方法です。

(2)供託による抹消方法

債権額・利息・損害金の全額を供託する方法です。
明治時代などのかなり古い抵当権は債権額が金50円など金額が低いですが、昭和の抵当権となると何十万円になることもあり、負担が大きくなってしまいます。またこの方法を利用するには、下記条件があります。

【条件】
・担保権者の所在が知れないこと
・被担保債権の弁済期から20年を経過していること
・被担保債権、その利息及び債務不履行により損害の全額に相当する金銭を供託できること

「担保権者の所在が知れないこと」はどう証明するのか
  • 個人の場合
    個人の場合は、配達証明付郵便を送付して「不到達」であれば「行方不明」を証明することができます。配達証明付郵便を送付するため、登記記録上の住所から戸籍謄本や住民票の写しを調査し、その住所地へ郵便を送付します。
  • 法人の場合
    法人の場合には、まず法務局で法人の登記事項証明書を調査します。会社の登記簿謄本や閉鎖謄本が取得できると「行方不明」には該当せず、登記事項証明書や閉鎖事項証明書などの登記記録が見当たらない場合に「行方不明」として認められます。つまり、何年も前に閉鎖されている会社でも閉鎖謄本が残っていると「行方不明」とはならないため、「行方不明」が条件となっている抹消方法は利用することができません。

(3)除権決定による抹消方法

裁判所に公示催告の申立を行い、除権決定を得る方法です。

除権決定とは・・・公示催告において催告された権利の届出を、届出の終期までになされなかった場合に、当該権利について失権の効果を生じさせる裁判のこと。

除権決定を得る方法は、訴訟に比べて手数料が低いのがメリットですが、下記条件をクリアするのがなかなか厳しい上に数か月の期間を要するため、実務上、この方法を利用することはほとんどありません。

また、被担保債権(担保の元となる債権)が消滅時効にかかっている場合は、前提として消滅時効の援用をする必要があります。消滅時効の援用をするためには相手に通知が届かないといけないため、消滅時効援用の意思表示の公示催告を申立て、そのあと除権決定の公示催告を申立てるという事になります。こうなると手間も時間もかなり要するので、抵当権抹消訴訟を提起した方が良いかもしれません。

【条件】
・担保権者の所在が知れないこと
・疎明する資料があること
・実体法上、権利が消滅していること

「疎明する資料があること」とは?

除権決定を得るためには、公示催告を申立てますが、そのために「権利が消滅していることを疎明するための資料」が必要となります。たとえば、完済証明書、契約書、領収書などです。

「実体法上、権利が消滅していること」とは?

除権決定を得て休眠担保権を抹消する場合、被担保債権又は担保権が、実体法上、消滅してることが必要です。

(4)判決による抹消方法

資料も何も残されていない場合の最終手段です。裁判所に訴訟を起こし、判決を得て抹消登記をします。裁判に数カ月の期間を要します。

(1)~(3)の手続きに比べて時間はかかりますが、一方で資料が揃っていなくても解決を図る事ができます。

【条件】
実体法上、被担保債権又は抵当権が消滅していること

それ以外は特に条件はなく、抵当権者が行方不明であっても、資料がなくても基本的には問題なく進めることができます。

抵当権者は行方不明でなくても良い?

1)~(3)の方法で単独申請をするには、抵当権者の行方不明が条件であるため戸籍謄本、住民票の写し、会社登記簿謄本等を調査する必要がありましたが、訴訟を提起する場合は、行方不明でなくても構いません。

実体法上、被担保債権又は抵当権が消滅していること

訴訟を提起して抵当権を抹消する場合にも、実体法として、抵当権が消滅している必要があります。抵当権が消滅していないのに訴訟をしても、相手方から反論をもらって終わるだけです。

なお、被担保債権を10年以上放置してしまった場合には消滅時効にかかっている可能性があります。その場合、抵当権が消滅していることにはなりませんが、訴訟の手続き上で、消滅時効を主張することで、抵当権を抹消することができます。

まとめ

不動産を売却しようとすると何らかのトラブルが起きることもあるでしょう。通常の不動産屋さんへ売却を依頼すると、そのトラブルに対応できない場合が多く、外部の司法書士などの専門家へ依頼することになります。そう言うときこそ弊社の強みが発揮されます。弊社は司法書士事務所が営む不動産屋なので、イレギュラー案件でも司法書士・不動産屋の両方からアプローチできるため、ストレスのかかるような売却トラブルもスムーズに解決することが出来るよう体制を整えております。
売却にご不安があってもなくても、弊社へご連絡をください。

清澤司法書士事務所では家族信託についても豊富な実績を有しております。
わからないことはぜひお気軽にご相談ください。

この記事の執筆・監修

清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所の代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。

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