遺産分割の流れと進まない3つの理由とは

スムーズに進めるための基本と対処法

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った翌日から10ヶ月以内に申告書の提出と納付の義務があり、期限が決められていますので迅速に手続きを進める必要がありますが、さまざまな理由で遺産分割が進まないことがあります。

遺産分割には一定の順番があり、その流れを押さえるだけでも手続きはぐっと見通しが良くなります。ここでは、基本の進め方と、よくある“つまずきの原因”をセットで解説します。

目次

遺産分割の流れ

相続が発生したとき、多くの方が最初に戸惑うのが「何から始めればいいのか」という点です。遺産分割は、次のような順番で進めるのが一般的です。

①遺言書の有無を確認する

最初に必ず行うべきなのが、遺言書の確認です。

遺言書が見つかれば、原則としてその内容に従って遺産を分けることになるため、遺産分割協議そのものが不要になる場合もあります。

最近は、自宅で保管されているケースだけでなく、公証役場や法務局に預けられていることも増えています。

特に2020年から始まった「自筆証書遺言書保管制度」により、法務局で遺言書の有無を確認できるようになり、探しやすくなっています。


手続きを進めてから遺言書が見つかった場合、手続きをやり直す必要が出る可能性があるため、始めにしっかりと探す必要があります。

【参考コラム】
遺言書が後から見つかった場合どうする?
遺言書作成・執行関連のコラム

②相続人を確定する

法定相続人は順序があり、配偶者は常に相続人、第一順位が子、第二順位が親などの直系尊属、第三順位が兄弟姉妹です。

子が亡くなっている場合、孫が代襲相続人となり、兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪が代襲相続人となります。

【参考コラム】
誰が相続人になる?相続と遺言の基礎知識

遺言書がない場合は、誰が相続人になるのかを法的に確定させます。
そのために、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をすべて集め、相続関係を証明します。

戸籍謄本は従来、本籍地の市区町村役場で収集する必要がありました。本籍地が遠方にある場合は郵送で取得する必要があり、面倒な作業でしたが、2024年3月からは戸籍の広域交付制度が導入され、本籍地以外の役場でも取得できるようになりました。

【法務省公式サイト】戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)

戸籍謄本は金融機関の手続きや不動産の登記にも必要です。原本を提示し、コピーしてもらう必要がありますが、生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本はそれなりの分量になりますので、毎回コピーをしていると時間がかかります。

また、法定相続情報一覧図は1枚の紙で法定相続人を証明することができて非常に便利です。法務局に依頼することで作成することができます。転籍などで戸籍謄本の数が多く分かれている場合は利用を検討してみても良いでしょう。

【参考コラム】
「法定相続情報証明制度」とは?

③財産の調査をする

相続人が確定したら、次は財産の調査です。
預貯金や不動産だけでなく、株式や保険、さらには借入金などの負債も含めて整理します。

この段階をあいまいにしたまま話し合いを始めると、後から新たな財産が見つかり、協議のやり直しになることがあります。

できれば生前に資産の一覧表を作っておくことが一番有効な手段です。財産の一覧があれば、スムーズに財産把握ができるでしょう。

相続が発生した後で、相続人が調査する必要がある場合は通帳を探すか、金融機関からの郵送物、メールなどで確認するしかありません。不動産は毎年送られてくる納税通知書で確認することができます。

最近では、ネット証券や暗号資産など「デジタル遺産」の確認も重要になっています。

【参考コラム】
相続で銀行口座が分からないときの調べ方

④遺産分割協議を行い、書面にまとめる

相続人・財産について確定することができ、遺言がない場合は遺産分割の話し合いを行います。不動産や金融資産、金などの現物資産や価値のある絵画や美術品などがあれば誰がどのような割合で相続するか細かく決めていきます。

相続人が多い場合や家族同士が遠方に住んでいる場合、何度も集まることは難しいため、メールや電話なども活用してやり取りする必要があるでしょう。配分について折り合いがつかない可能性がある場合は早めに段取りして話し合いの機会を設ける必要があります。

生前に贈与を受けている人がいる場合や、介護の負担が1人に偏っていた場合は配分に納得がいかず、時間がかかるケースも多くあります。法定相続割合が基本となりますが、双方がお互いの事情をよく考慮し、配分について協議する必要があります。

配分が決定したら誰が何を相続するか書面にする必要があるため、遺産分割協議書を作成します。この書類は、不動産の名義変更や銀行手続きに必須となるため、内容の正確性が非常に重要です。遺産分割協議書の作成が難しい場合相続の専門家である司法書士に相談することをおすすめします。

【参考コラム】
遺産分割協議関連の記事

⑤相続税の計算を行う

相続税の計算は法定相続割合通りに取得したものと想定して相続税の総額の計算を行い、取得する財産に応じて按分して相続税の計算を行います。また、財産の種類や取得する人によって特例を利用でき、評価減につなげることができます。

そのため、財産を把握し、誰が何を相続するかを決めないと相続税の計算をすることはできません。相続税の申告は相続発生の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。なお、財産が基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)の範囲内の場合は相続税の申告は必要ありませんが、特例などを活用することで相続税が0円になる場合は申告が必要となります。

忙しい中での10ヶ月はあっという間に過ぎてしまいますが、納税義務のある者が相続税の申告に遅延すると加算税を請求される場合がありますので、期限内に申告を行う必要があります。

【相続コラム】
みなし財産とは?民法上の相続財産と相続税の対象となる財産は違う!?

遺産分割が進まない3つの理由

相続が発生すると遺産分割を進め、不動産の登記や金融機関の名義変更、相続税の申告を進める必要があります。

実際の現場では、「手順は分かっているのに進まない」というケースが少なくありません。
その原因は、大きく分けて3つに集約されます。

理由① 遺産の内容と額がわからない

「まだ他にも財産があるのではないか」という疑念がある状態では、誰も納得して話し合いに応じることができません。この問題は、情報の不足というより「共通認識がないこと」が本質です。相続人ごとに把握している情報が違うため、不信感が生まれてしまいます。

対処として有効なのは、財産の一覧を作成し、全員が同じ情報を共有することです。専門家に調査を依頼すれば、客観的な資料として信頼性も高まり、冷静な話し合いがしやすくなります。

理由② 感情の対立や不公平感

「介護をしてきた分を考慮してほしい」「長男だから多くもらいたい」など、気持ちの問題が絡むと話し合いは一気に難しくなります。

特に不動産のように分けにくい財産がある場合、「公平」と「平等」のバランスが崩れやすく、対立が長期化しがちです。

このような場合、当事者だけで解決しようとすると感情が先行しやすくなります。第三者である司法書士や弁護士が入ることで、法律に基づいた整理ができ、合意形成の土台が整います。また、本来は生前に遺言書を準備しておくことで、こうした対立は大きく防ぐことができます。

理由③ 税金の計算方法がわからない

被相続人の財産が基礎控除を超える場合、財産を取得する相続人は相続税の申告を行う必要があります。

相続税の計算をするための財産の評価や特例の適用可否の判断は非常に複雑で、知識がない人が相続税の計算を行うことは簡単ではありません。例えば、不動産の評価を行う場合、土地は路線価、建物は固定資産税評価で計算を行います。アクセスが良い土地は売値も相続税評価も高くなりますが、路線価は実際に売却する際の価格とは異なりますので、注意しましょう。

相続税の申告は相続開始から10ヶ月と短い期間で行う必要がありますので、早く手続きをする必要がありますが、誤った申告をすると税務調査で指摘される可能性がありますので、慎重に行う必要があります。

自分で行うことは困難と判断した場合は早めに税理士に依頼する方がよいでしょう。費用はかかりますが、税理士に依頼することで各種書類の作成負担を減らすことができますし、間違いなく確実に申告を行うことができます。

しかしながら、相続税・贈与税に強い税理士はそれほど多くはいません。税理士に依頼する際は相続税や相続税に関連のある贈与税に強い税理士に依頼することが重要です。

まとめ:円満な相続のために大切なこと

遺産分割は、単にお金を分ける作業ではなく、ご家族のこれからの関係を守るための大切なプロセスです。手続きの流れはシンプルですが、実際には「人・物・税」の3つの要素が複雑に絡み合います。

少しでも「自分たちだけでは難しい」と感じたら、一人で抱え込まずに早めに専門家を頼ってください。

清澤司法書士事務所では、税理士をはじめとする各分野のプロフェッショナルと連携し、窓口一つでスムーズな解決をサポートいたします。初回のご相談は無料です。まずはお気軽にお悩みをお聞かせください。

この記事の執筆・監修

清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所/中野リーガルホームの代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。

Tweets by tokyo_souzoku