遺言書の「相続させる」と「遺贈」の違いとは?

遺言書を書くとき、多くの人が迷うのがこの二択です。
「〇〇に自宅を相続させる」と書くか、それとも「〇〇に自宅を遺贈する」と書くか

どちらも“財産を渡す”という意味では同じに見えます。しかし、実はこの言葉の違いが、税金や手続きの負担を大きく左右します。たった一語の違いが、数十万円、場合によっては数百万円の差につながることもあるのです。

遺言は人生最後のメッセージ。だからこそ、正しく選びたいところです。その重要性をより丁寧に解説していきます。

目次

​​「相続させる」と「遺贈する」の決定的な違い​

​​最大の違いは、「誰に渡すか」です。

「相続させる」は、法定相続人に対して使う言葉です。配偶者や子、親、兄弟姉妹など、民法で定められた相続人だけが対象になります。

一方、「遺贈する」は、相続人以外にも使える言葉です。
たとえば、お世話になった友人、孫、子の配偶者、慈善団体などに財産を渡す場合は「遺贈」になります。

つまり、相続人に渡すなら「相続させる」、相続人以外に渡すなら「遺贈する」、これが基本ルールです。

ただし問題は、ここからです。違いは“呼び方”だけでは終わりません。​​

不動産を渡すときに生まれる“お金の差”

自宅や土地を渡す場合、「相続」と「遺贈」では税金が大きく変わります

相続で不動産を取得する場合、登録免許税は評価額の0.4%です。ところが遺贈だと2.0%…なんと5倍です。

さらに、相続では原則かからない不動産取得税が、遺贈では課税されます。

たとえば評価額3,000万円の不動産なら、登録免許税だけで数十万円の差が出ます。そこに不動産取得税が加われば、負担の差はさらに広がります。

また、登記手続きも違います
相続なら受け取る相続人が単独で申請できますが、遺贈では遺言執行者の関与が必要になるなど、手続きが複雑になることがあります。

同じ家を渡すだけなのに、費用も手間もまるで違う。ここは見逃せないポイントです。​​

借地権・借家権は承諾が必要?思わぬ落とし穴

​​​借地や賃貸住宅に関する権利も要注意です。

相続なら、契約上の地位はそのまま自動的に引き継がれます。地主や大家の承諾は不要です。

しかし遺贈の場合は「譲渡」と扱われるため、原則として賃貸人の承諾が必要になります。
場合によっては承諾料が発生し、借地権価格の1割前後を求められることもあります。

もし承諾が得られなければ、遺言どおりに渡せない可能性もあります。
「遺言に書いたから大丈夫」と思っていても、法律上はそう単純ではないのです。​

​​農地は要注意。遺贈できないこともある農地相続への影響

​​​農地はさらに特殊です。

法定相続人が相続する場合は、農業委員会への届出で足ります。原則として許可は不要です。

しかし、相続人以外への遺贈では、農地法の許可が必要になります。
農業従事者でなければ許可が下りない可能性が高く、結果として取得できないケースもあります。

つまり、「あの農地は友人に遺贈する」と書いても、実現しないことがあるのです。
農地を持っている方は、特に慎重な設計が必要です。

​​特定遺贈の場合は登録免許税の一般税率と不動産取得税が発生します。農地は特殊な相続財産であるため、農業従事者以外への遺贈は、大きなデメリットがあります。​

基礎控除は増える?相続税との関係

相続税には基礎控除があります。
計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。

重要なのは、遺贈を受けた人は、法定相続人でなければ人数にカウントされないという点です。

たとえば法定相続人が3人なら、基礎控除は4,800万円です。そこに孫へ遺贈しても、控除額は増えません。

節税を考える場合、この違いは無視できません。

遺贈は相続税が2割増しになるケースも

さらに見落としがちなのが「相続税の2割加算」です。

配偶者や子以外の人が遺贈で財産を受け取ると、計算された相続税額が2割増しになります。
孫や子の配偶者も対象になることがあります。

税額が100万円なら120万円に。1,000万円なら1,200万円になります。

財産が大きいほど、この差は深刻です。

遺贈は思いを託す手段として有効ですが、税負担が重くなる可能性があることは理解しておく必要があります。

まとめ:言葉ひとつで未来が変わる

​​​「相続させる」と「遺贈する」は、単なる言葉の違いではありません。

不動産の税金、借地権の承諾、農地の許可、基礎控除、相続税の2割加算。
選ぶ言葉によって、手続きも費用も大きく変わります。

原則はシンプルです。法定相続人には「相続させる」。それ以外には「遺贈する」

ただし、不動産や農地が絡む場合は専門家への相談が欠かせません。
遺言は、財産を渡すだけでなく「負担を残さない」ためのものでもあります。

正しい言葉の知識が、円満な相続への第一歩です。もし、相続に関する言葉や仕組みがよくわからなくても、どうぞご心配なさらないでください。

清澤司法書士事務所では、「こんなこと聞いていいのかな」「どこから話せばいいのかわからない」そんな段階のご相談でも、いつでも歓迎しています。

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この記事の執筆・監修

清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所の代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。

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