空き家を相続して困っている方へ─法改正で放置リスクが急増中

最終更新日:2025年11月20日

相続したけれど使う予定がない」「売るにも手間がかかる」―そんな理由で空き家を放置している方が増えています。

しかし、2023年12月に施行された改正空き家法により、これまで問題視されていなかった“管理が不十分な空き家”も、行政からの指導や税負担の対象になる可能性が出てきました。

空き家を放置すると、近隣トラブルや資産価値の低下だけでなく、固定資産税の増額や過料(罰則)といった金銭的なリスクも伴います。

この記事では、空き家を放置することで起こりうるリスクと、売却・活用・制度の活用など、今できる対策についてわかりやすく解説します。相続した空き家をどうすべきか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

目次

空き家が増加している理由

空き家の取得原因の大部分が「相続」です。
親や祖父母から不動産を相続したものの、利用予定がなく、どう扱えばよいか分からないまま放置されるケースが増えています。

特に地方や郊外の住宅では、解体費用や管理コストを理由に手をつけられず、空き家のまま放置されることが少なくありません。

また、少子化の影響で、両親や祖父母の不動産が一人の相続人に集中するケースも増えています。その結果、複数の空き家を同時に抱える相続人も珍しくなく、管理や処分が追いつかないという現実があります。

空き家が起こす問題

空き家をそのままにしておくと、さまざまな問題が発生します。
2023年12月に施行された改正空き家法により、管理が不十分な空き家も「管理不全空き家」として行政指導の対象となる可能性があり、これまで以上に放置リスクが高まっています。

<空き家を放置することで発生する問題>

(1)固定資産税の問題

(2)管理の問題

(3)犯罪に巻き込まれる可能性

(1)固定資産税の問題

空き家であっても固定資産税の支払義務は生じます。「住宅が建っていること」を条件に、「住宅用地の特例措置」が適用され固定資産税の負担は一部軽減されるものの、一定の税金を納めなくてはなりません。

※「住宅用地の特例措置」・・・具体的には、住宅用地の敷地面積20平方メートルまでの部分については土地の評価額を6分の1とし、20平方メートルを超える部分については3分の1として固定資産税を計算します。適用条件が「住宅が建っていること」なので、空き家を解体してしまうとこの特例が適用されなくなり、税金が高くなってしまいます。

しかし、今回の法改正により、空き家の管理状態によっては「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定されてしまい、この指定がされると「住宅用地の特例措置」が受けられなくなり、固定資産税が数倍に跳ね上がりますのでご注意ください。

※「特定空き家」について

(2)管理の問題

人が住まなくなった家は急速に傷みます。特に木造住宅は湿気や害虫の影響を受けやすく、数年で深刻な劣化が進むこともあります。

また、管理・手入れがされていない庭は荒れ放題となり、倒木が隣家に被害を及ぼしてしまうこともあります。その場合は、賠償責任が発生する可能性もあり非常に危険な状態です。

このような状況にならないために、管理を続けるには、現地に定期的に通い、風を通すなど時間とお金が必要です。

(3)犯罪に巻き込まれるリスク

空き家に住み着く者がでてきたり、放火されてしまったケースもあります。管理不行き届きであるとして損害賠償の訴訟を起こされたケースもあります。

空き家問題を解決するために

空き家の増加に対応するため、2023年12月に「空家対策特別措置法」の改正が施行されました。
この改正では、空き家の発生を抑え、適切な管理や活用を促すことが目的とされています。

これまで、倒壊の危険や衛生上の問題がある「特定空き家」に対しては、自治体が改善勧告や命令を出すことができました。

今回の改正では、改善勧告に従わない場合、「住宅用地の特例措置(固定資産税の軽減)」の対象から除外されることが明確にされました。

さらに、今回の改正では「管理不全空き家」という新たな区分が追加されました。これは、倒壊の危険まではないものの、庭木の繁茂やゴミの放置など、管理が不十分な空き家を指します。

このような空き家も、特定空き家と同様に税制優遇の対象外となる可能性があるため、放置する前の段階で所有者に管理を促す制度へと強化されています。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000138.html 国土交通省HP

建物を取り壊して更地(空き地)にすれば、建物の腐食や倒壊などのリスクは回避できますが、「住宅用地の特例措置」が適用されなくなり、固定資産税が大幅に増える可能性があります。そのため、これまでは税負担を避ける目的で建物を残したまま空き家を放置するケースが多く見られました。

しかし、今回の法改正により、建物が残っていても管理状態が悪ければ特例措置の対象外となるため、税額軽減にはつながらない可能性があります。つまり、「建物を残しておけば税金が安くなる」という従来の考え方は通用しなくなりつつあります。

空き家の管理や処分については、早めに専門家と相談し、現状に合った対応を検討することが重要です。

相続土地国庫帰属制度の可能性と問題点

空き家や使い道のない土地の増加に対応するため、2023年4月27日から「相続土地国庫帰属制度」がスタートしました。

この制度は、相続や遺贈によって取得した土地を、一定の条件のもとで国に引き渡すことができる仕組みです。申請が認められれば、土地の所有権が国に移り、固定資産税や管理の負担から解放されるというメリットがあります。

ただし、制度を利用するには厳しい条件があり、誰でも簡単に使えるわけではありません。特に次のような方にとっては現実的な選択肢となり得ます。

たとえば、遠方の土地を相続したものの使い道がなく、管理が困難な方や、売却が難しく放置による税負担や近隣トラブルが心配な方には有効です。また、相続放棄はしたくないが土地だけ手放したい方、将来的な空き家リスクを避けたいと考えている方にも向いています。なお、事前に更地にしておくと申請しやすくなる傾向があります。

制度を活用するには、まず土地の状態を確認し、建物の有無や他人の権利関係、境界の明確さなどをチェックすることが重要です。解体や測量が必要な場合は、専門家に相談して費用の見通しを立てておくと安心です。また、申請前に「この土地は制度の対象になるかどうか」を無料相談などで確認しておくと、手続きがスムーズに進みます。

相続土地国庫帰属制度は、誰にでも簡単に使える制度ではありませんが、「どうしても引き取れない土地」に対する最後の手段として注目されています。空き家や不要な土地の相続に悩んでいる方は、制度の内容を正しく理解し、専門家と連携しながら活用の可能性を検討してみましょう。

※「相続土地国庫帰属制度」について

専門家に相談しましょう

相続した空き家や使い道のない土地をどうすればいいのか、悩んでいる方は少なくありません。しかし、不動産に関する問題は法律・税金・売却など多岐にわたり、知識がないまま放置してしまうと、税負担や近隣トラブルなど、思わぬ損失につながることもあります。

「何から始めればいいかわからない」「誰に相談すればいいのか迷っている」―そんなときこそ、早めに専門家へ相談することが安心への第一歩です。

清澤司法書士事務所は、宅建業の免許を持つ司法書士事務所として、法律・税務・売却の視点を一括でサポートできる体制を整えています。司法書士であり不動産業者でもあるため、空き家の登記・税務・売却までワンストップで対応可能です。

相続や空き家のことで「ちょっと聞いてみたい」「自分のケースはどうなるのか知りたい」と思ったら、どうぞお気軽にご相談ください。清澤司法書士事務所は、相続と不動産売却に特化した豊富な実績をもとに、あなたに合った最適な解決策をご提案いたします。

この記事の執筆・監修

清澤 晃(司法書士・宅地建物取引士)
清澤司法書士事務所の代表。
「相続」業務を得意とし、司法書士には珍しく相続不動産の売却まで手がけている。
また、精通した専門家の少ない家族信託についても相談・解決実績多数あり。

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